岡山理科大学が生み出した新たなワイン用ブドウ「マスカットシラガイ」
岡山理科大学の星野卓二名誉教授のチームが、日本で初めて『マスカットシラガイ』という新品種のワイン用ブドウを開発し、農林水産省に正式に新品種登録を申請したことが明らかになりました。この新しいブドウは、岡山県の高梁川流域にのみ自生する貴重な野生種「シラガブドウ」と、マスカット・オブ・アレキサンドリアとの交雑から誕生しました。
希望の新種を求めて
星野名誉教授は、「野生の遺伝子を持ったワイン用ブドウを作りたかった」という思いを胸に、地域振興や観光振興に貢献できることを期待しつつ、ブドウ作りに情熱を注いできました。
2017年に設立された岡山理科大学ワイン発酵科学センターの初代所長としても活動し、倉敷市の『ふなおワイナリー』と連携を深める中で、絶滅が懸念されるシラガブドウに着目。地域の特性を活かした新たなブドウ品種の開発を構想しました。
地域創生に向けた取り組み
2018年に岡山理科大学は倉敷市とふなおワイナリーとの間で包括連携協定を結び、国が認定した地方創生事業として新種の交雑を開始しました。
2022年度には、交雑した系統ごとにワインを醸造し、その糖度や香り、味などを検証するプロセスを経て、有望な系統の選定に成功。ついに2024年、マスカットシラガイの誕生に結びつきました。新品種としての登録は現在進行中で、本当に登録されるのは数年先の見込みです。
記者会見の様子
記者会見も岡山理科大学で行われ、小松賢治副市長や岡山理科大学の平野博之学長らが出席。新種のブドウを用いた試食や、ワインのテイスティングも行われ、その味わいについては「甘くて美味しい」「マスカットの香りが感じられて飲みやすい」と称賛されました。
小松副市長は、地域独自の魅力を持つワインが期待できることに喜びを語り、三宅社長は新たなブランド力を生かしたワイン作りに意気込みを見せました。また、平野学長は大学の教育と研究の成果を地元に還元し、地域の課題解決に貢献する姿勢を強調しました。
今後の展望
現在、マスカットシラガイはふなおワイナリー掛け持ちで20株栽培され、2024年度の収穫を41.6キログラムと見込んでいます。さらには新たに植えられた接ぎ木苗300株も含め、今後は500キログラム以上の収穫を目指す計画が立てられています。
シラガブドウは高い糖度と酸度の低さで知られ、果実が裂けない特性などもあり、将来的には品質向上のための施策も検討されています。
岡山理科大学の取り組みが地域のワイン文化を発展させ、地域振興につながることを期待しています。