COPDの早期発見に向けた革新的な取り組み
最近、ニチバン株式会社とサイントル株式会社が手を組み、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の早期発見を目的としたウェアラブルデバイスの共同開発契約を締結しました。この新たなデバイスは、スキンエレクトロニクス技術を活用し、呼吸運動を可視化することで、医療現場に革新をもたらすことが期待されています。
COPDの現状と課題
COPDは主にタバコの煙などの有害物質に長期間さらされることが原因で発生する肺疾患で、日本では40歳以上の約530万人が影響を受けているとされています。しかし、これらの患者のほぼ95%は未診断または未治療であり、症状が進行してしまうケースが多いのが現実です。こうした背景から、厚生労働省が掲げる「健康日本21(第三次)」において、COPDの早期発見と重症化予防が重要な課題とされています。
共同開発の背景
ニチバン株式会社は、長年の経験を活かして医療現場において実績を持つ粘着技術のリーダーとして知られています。一方、サイントル株式会社は、スキンエレクトロニクス技術に特化しており、これらの両社の強みを融合させることで、より効果的な早期発見ツールの開発が可能になると考えています。
新しいウェアラブルデバイスの開発には、東京大学の染谷隆夫教授が提唱する薄型センサ技術が活用されており、胸部に貼るだけで呼吸運動を簡単に測定できます。この技術の導入により、専門的な機器を必要とせず、患者さんは手軽に自分の呼吸状態を把握できるようになります。
デバイスの特長
新たに開発されるデバイスの特長は、以下の通りです。
- - 簡単な操作性: デバイスを胸に貼るだけで呼吸状態をリアルタイムで測定し、手軽に利用できます。
- - 高精度な測定: 有機光学素子を用い、呼吸状態や脈拍を同時に連続測定することが可能です。
- - 肌への配慮: ニチバンが誇る肌に優しい粘着テープを使用しており、長時間の使用でも肌に負担がかかりにくい設計になっています。
今後の展望
両社は、2026年に一般医療機器としての試験販売を神奈川県内の医療機関および自治体から開始し、2027年には本格的な量産を目指しています。このデバイスはCOPDだけでなく、様々な呼吸器疾患への適用が考慮されており、これにより広範なユーザーに対する健康管理の支援につながるでしょう。
また、本製品の開発過程では信州大学や神戸大学と連携し、臨床研究を進めながら、実践的なデータの収集と分析を行っています。2025年には、これらの研究成果が第75回日本病院学会で発表される予定です。
ニチバンとサイントルについて
ニチバン株式会社は、創業1918年から「人々の快適な生活を支える価値ある製品づくり」をテーマに、身近な製品をいくつも手掛けてきました。サイントル株式会社は、革新的な技術をもとに、医療・介護・ヘルスケアの分野で幅広い展開をしているスタートアップ企業です。これからも、両社の協力のもと、新しい製品やサービスが市場に登場することが期待されます。
お問い合わせ
この件に関する詳しい情報は、ニチバン株式会社の経営企画室コーポレートコミュニケーション部またはサイントル株式会社の公式ウェブサイトをご覧ください。