畠山丑雄、新作『叫び』が芥川賞を魅了
2023年、文学界に新たな波を巻き起こしたのは、畠山丑雄です。彼の中篇小説『叫び』が第174回芥川賞を受賞し、その作品が持つ深いテーマ性や独特の描写が高く評価されています。この受賞は、文壇における彼の存在感を強めることになりそうです。
作品の背景
『叫び』は、畠山氏が二年半ぶりに発表した中篇小説であり、彼の文芸誌への復帰作でもあります。石原書房からの刊行が予定されている『改元』が三島由紀夫賞の候補にも挙がり、彼の名前が再び注目される中での受賞です。
この作品では、大阪府茨木市に暮らす早野ひかるの姿が描かれています。彼女は自暴自棄になり、生活に行き詰まりを感じている青年の物語を通じて、自己の再生や人生の意味を見出していきます。このストーリーは、過去の歴史的背景と現代の問題を交錯させて描かれており、読者に強いメッセージを伝えます。
物語の核心
早野はある晩、遠くから聞こえてくる鐘の音に誘われ、不思議な男と出会います。この男は生活保護を受けており、彼女の中に潜む負い目を見透かします。激しい否定の中で、早野は自己認識を深め、次第に心を軽くする過程が描かれています。男を「先生」と呼ぶようになり、銅鐸作りや茨木の歴史を学びながら、彼女の内面的な変化が促進されていきます。
作品はまた、茨木の過去、すなわち罌粟栽培や阿片製造といった過去の歴史にも触れています。特に、一人の青年が満州に渡り、天皇からの承諾を得て広大な罌粟畑を作り、「陛下のための花束」を編むという、実際にあった歴史が物語の一部として巧みに取り入れられています。この歴史的な背景が、早野の現実感を強める重要な要素として機能しているのです。
時代背景と人物の繋がり
早野は過去の青年について考えながら、現代の自分の位置に思いを馳せます。「自分の存在意義は何か」を見つめ直し、そこで自らの「聖(ひじり)」として仰ぐ女性との約束、すなわち大阪・関西万博への訪問が一つの象徴となります。この約束を通じて、早野は昭和と令和、過去と現在が交差する瞬間を体感し、内に秘めていた叫びが解放されるのです。
結び
『叫び』は、畠山丑雄が独特の視点で人間の生きる意味や歴史との関わりを考察した作品です。その豊かな表現力と深いテーマ性によって、読者は作品の世界に引き込まれ、考えさせられること間違いありません。芥川賞受賞という名誉は、彼の今後の文学活動にも大きな影響を与えることでしょう。彼の今後の作品にも期待が寄せられています。