新たなEV時代に必要な防護服への挑戦
このたび、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下、MFTBC)、日本ゴア合同会社、そしてミドリ安全の三社が共同で開発したのが、新しいアーク熱防護作業服『ARCTECT GEAR for EV』です。この製品は、電動車両の整備や試験、製造の現場で働く作業者が、アーク熱から身を守るためのものです。
電動車の普及とその安全性の確保
国際エネルギー機関の発表によると、2023年には新販売される自動車の20%が電動車(BEV+PHEV)に達しています。この趨勢は今後も続く見込みであり、特にEVの整備現場では400から800Vという高電圧が関与します。ここにおいては、アーク放電という、電気のショートによる爆発的な放電現象が発生する可能性があり、この現象は瞬時に5,000〜20,000℃の高温をもたらします。これにより、従来の作業服では不十分な火災や溶解のリスクが考えられます。
既存の防護服の限界
既存のアーク放電用防護服は主に電力設備での作業を想定されており、自動車の整備特有の要求には応じていなかったのです。EV整備では狭い場所での可動性や、閉所での体温調節、さらには頻繁な電圧切り替えへの対応が求められます。こうしたニーズに対応する防護服を開発するのには、新しい発想が必要でした。
三社の強みを生かした共同開発
この課題解決に向け、MFTBCは2017年の『eCanter』でのEV整備の実務知識を持ち//、日本ゴアはプロダクト技術の華やかな先進性を提供、ミドリ安全は70年の作業服開発に基づく動きやすさの設計技術を提供しました。このような三社の強みが結実し、『ARCTECT GEAR for EV』が誕生しました。
PYRAD®ファブリクスの特長
本作業服に使われる『PYRAD® プロダクト by GORE-TEX LABS』は、従来の防護服を一新する素材です。軽量性や透湿性を維持しつつ、アーク放電の熱から作業者を完全に守る防護性能があります。この素晴らしい性能はIEC/EN 61482-2などの国際基準でも認められています。
将来的な展開
MFTBCは2026年から、海外サービス拠点でのメカニック向けにこの作業服の導入を進め、国内の拠点に向けても展開を検討しています。また、ミドリ安全でも同様の防護性能を持つより汎用的な作業服を2026年夏に販売する予定で、これからの作業現場の安全性を大幅に向上させることが期待されています。
このように、EV時代における作業者の安全を守る新たな防護服の誕生は、業界においても大きな注目を集めています。安全と快適さを両立させるこの製品は、これからの電動車両時代に必須の存在となるでしょう。