概要
株式会社IBUKI(山形県)は、2023年2月に、撥水剤を使用せずに射出成形のみで高撥水性を実現する金型技術を開発したと発表しました。この技術はすでに特許を出願済みで、注目を浴びています。従来、高撥水や超撥水効果を持つプラスチック部品は、射出成形後に撥水剤を塗布したり、撥水シートを貼る二次加工が必要でした。そのため、コストや環境面での懸念が存在していました。
従来の問題点
プラスチック部品の製造プロセスには、多くのステップが存在します。主に二次加工として撥水剤の塗布や撥水シートの貼り付けが必要ですが、これにより追加の資材と作業コストが発生し、作業環境にも有機溶剤の影響が懸念されていました。このような問題を解決するために、IBUKIは二次加工なしで、射出成形の工程のみで超高撥水効果を持つ部品を作れる技術を開発しました。これによって環境負荷を軽減しつつ、コスト削減につながります。
開発の背景
IBUKIは、精密切削技術を駆使し、過去数十年にわたって多様な金型を製作してきました。特に、プラスチック表面に細かいデザインを施す加飾技術に長けており、様々な柄を射出成形で表現してきました。これらの技術力を基に、同じく精密加工を用いて機能性を持つプラスチック部品の製造に挑戦することとなりました。この結果として生まれたのが、「撥水機能を有するプラスチック部品」です。
撥水機能の原理
撥水機能を実現するためには、プラスチック部品の表面に特定の微細な凹凸が必要です。この技術には「ロータス効果」と呼ばれる原理が活用されています。IBUKIは通常の射出成形設備を用い、2年にわたる研究の末、ポリプロピレン(PP)樹脂を用いて超高撥水効果が得られることを確認しました。一般的なプラスチックの撥水角は90度から100度程度ですが、IBUKIの開発したプラスチック部品の撥水角は140度を超え、条件を最適化すれば150度を達成可能です。
技術による利点
この新技術により、以下のような利点が得られます。
1.
二次加工が不要: 撥水剤の塗布やシートの貼り付けを省略でき、追加の資材と工数を削減。
2.
形状の自由度: 曲面など塗布が難しい形状でも一貫した撥水性能を確保。
3.
作業ミスの排除: 二次加工によるエラーがなく、安定した品質を提供。
用途と今後の展望
この技術を活用したプラスチック部品は、特に自動車内装や家電関連の部品として幅広い用途が期待されます。また、反射防止機能や心地よい触感の付与など、他の機能的特徴も研究が進められています。IBUKIは、様々なプラスチック素材に対応できるように技術の研究開発を続けるとともに、国内外で高機能な金型を提供する企業として成長を目指しています。
会社概要
代表取締役社長執行役員 : 中東秀喜
所在地 : 山形県西村山郡河北町谷地字真木160-2
設立 : 1956年
資本金 : 7,800万円
事業内容 : 射出成形金型の設計・製造、プラスチック成形品の試作及び量産、特殊加工の研究開発など。