高齢者の嗅覚トレーニングで健康増進に貢献する取り組み
フィッツコーポレーションが埼玉県上尾市の「アクティ フィジオラボ」で行った「鼻トレ」と呼ばれる嗅覚トレーニングの取り組みが注目を集めています。このプロジェクトは、高齢者の嗅覚機能の低下やそれに伴うリスクを解消することを目的としており、実施後には約90%の高齢者が嗅覚への関心を高めたとの結果が出ています。
実施の背景
嗅覚は年齢と共に衰えやすく、その変化にはまったく気づかないことが多いです。ある調査によると、高齢者の20%しか自らの嗅覚機能の低下に気がついていないという結果が示されました。嗅覚の低下は生活に影響を及ぼすだけでなく、ガス漏れや煙の感知に関わる安全面でもリスクを孕んでいます。そのため、嗅覚を意識する機会を作り出す「鼻トレ」の実施が決定されました。
実証実験の概要
この実験は、1か月間にわたって以下の3つのアプローチを取り入れて行われました。
1. アロマディフューザーを使った香りの噴霧
2. アロマストーンを利用した嗅覚トレーニング
3. 嗅覚に対する意識を高めるポスター掲示
実験終了後にはアンケートを行い、参加者に嗅覚に対する意識や味覚の変化について尋ねました。結果として、約90%の参加者が香りを意識したと答え、約29%は味覚に変化を感じたとのことです。
参加者の声
- - Aさん: 「最近、香りを感じづらくなっていたが、柑橘系の香りを楽しんでからすっきりした気持ちになります。」
- - Bさん: 「金木犀の香りが好きで、気分が良くなります。」
- - Cさん: 「香りについてのコメントはなかったが、気になることはなくなった。」
- - Dさん: 「久々に香りを嗅いだら、昔を思い出して少し若返ったようです。」
考察
「鼻トレ」を経て高齢者の90%に嗅覚への関心を持たせた背景には行動変容ステージモデルが作用しています。このモデルは無関心から状態を一段階でも前進させることが重要です。高齢者の多くは自分の嗅覚の問題に気づいていないため、まずは簡単に体験できるトレーニングが求められていました。
今後の期待
これらの結果から、高齢者の嗅覚トレーニングは認知機能をも向上させる可能性があるとの声が上がっています。今後は、客観的な指標である嗅覚検査も取り入れ、嗅覚機能の改善が本当に行われているのかを検証していく予定です。
フィッツコーポレーションは、自然な形で香りを取り入れることにより、嗅覚を意識し続ける生活環境を整え、高齢者の健康や生活の質向上に寄与していく考えです。
このような取り組みにより、無関心期にある高齢者に対する効果的な支援ができることを期待しています。