失語症を乗り越える新たな挑戦、朗読劇「言葉に架かる虹」の舞台裏
脳の損傷から生じる失語症という厳しい現実に直面した実業家が、自らの体験をもとにエンターテインメントの世界へと挑んでいます。その名は坂田敦宏。彼は、朗読劇「言葉に架かる虹」を通じて、同じ病を抱える人々へ希望を届けるべく、勇気をもって舞台に立ちます。2024年10月19日、彼のメッセージを込めたこの朗読劇が品川区のきゅりあんで上演されることが決定しました。
失語症は脳卒中や事故などによる外的要因によって引き起こされることが多く、発症前の生活やキャリアによって当事者に与える影響は異なります。坂田はその実例の一つです。彼は経営者として成功を収めたものの、失語症の告知を受けた際には、左半身が完全に動かなくなり、「もう歩けることはない」と医師に宣告されたのです。しかし、その困難を乗り越え、今では20社以上を経営する立場に復帰しました。
彼は、自身の経験を通じて、失語症や高次脳機能障害が当事者やその周囲に与える影響について理解を深め、自らの意義を見出しています。「障害も経営も全く同じ」という坂田の言葉は、これまでの人生で培った力強さが表れているといえるでしょう。この朗読劇は、障害を持つ人々が共感し、また他者に理解を促すための場としても重要な役割を果たします。
朗読劇の内容は、第一部が朗読劇「言葉に架かる虹」、第二部がトークショー「失語症者にとって朗読の効果とは」となっており、様々な視点から失語症についての議論を深めます。特に、医師である長谷川幹氏と文筆家の鈴木大介氏を招き、朗読が持つ治癒の可能性についても触れられます。チケットは舞台鑑賞が3,000円、アーカイブ配信が2,500円で販売され、クラウドファンディングも実施されます。
ウィズコロナ時代において、失語症や高次脳機能障害を持つ人々が増加していることは決して他人事ではありません。特に、経営者や事業家にとっては、そのリスクは日常的に意識しておくべき課題です。坂田の挑戦は、失語症という病に対する理解を深め、社会の偏見を取り除くための大きな一歩となるでしょう。
さらに、この朗読劇は、昨年の第1回公演でチケットが完売するなど、大きな注目を集めています。演者たちが、元宝塚歌劇団の男役や2.5次元ミュージカルの主演俳優としての経歴を持つ人々で構成され、障害を持ちながらも華やかさを失わない演技が期待されています。石原由理が代表を務める一般社団法人ことばアートの会が主催し、大きな声で社会にメッセージを届ける場を作り出しています。
私たちの人生には、誰しもが一度は暗い影に落ち込みます。しかし、その中で小さな光を見出すことができたとき、再び立ち上がる力を得ることができます。坂田はそのリアルな体験を舞台上で演じ、人々に勇気を届けることを目指しています。コンサートや舞台が再開される中で、この朗読劇がもたらす新たな試みとその影響に期待が高まります。人生は続いていき、私たちはその中で自らの役割を見つけることが求められています。是非、彼の言葉を耳にし、自身の目でその演技を観ることで、新しい気づきを得てもらいたいと思います。