孤育てを防ぎ、子どもを守る『きずなメール基金』の設立
2024年9月6日、新宿区にあるNPO法人「きずなメール・プロジェクト」は、「孤育て」(孤独な子育て)を防ぎ、子ども虐待の減少を目指すための基金を設立しました。この『きずなメール基金』は、全国の自治体に対して有償で展開している「きずなメール事業」をさらに多くの地域に広げるために用意された資金です。
背景にある課題
2022年度の児童相談所における虐待相談の対応件数は21万9170件という過去最多を記録しました。また、その年度に虐待死した子どもは72人であり、特に0歳児が4割以上という深刻な状況です。こうした背景には、妊娠、出産、子育てを迎える中での不安や孤立があります。そこでNPO法人「きずなメール・プロジェクト」は、テキストメッセージを通じて継続的にサポートを提供する「セーフティネット」を拡充し、子ども虐待を減少させることを目指しています。
「きずなメール」の内容
「きずなメール」自体は、医師や様々な専門家が制作したテキストメッセージで構成されています。妊娠初期から子どもの3歳までの成長と発達に合わせた情報を届けるもので、妊娠期には「マタニティきずなメール」、出産後には「子育てきずなメール」となっています。
配信内容には、赤ちゃんの成長、病気や事故への予防法、子育てに関するアドバイスなどが含まれ、利用者に寄り添いながら「安心」「つながり」「楽しみ」を提供します。妊娠初期から産後の100日間は毎日、その後は頻度を減らしつつ、トータルで約540通のメッセージが届く仕組みが整えられています。
きずなメール事業の概要
「きずなメール事業」は、子育て当事者の孤立を防ぎ、子ども虐待を減少させるために設けられたもので、情報提供とコミュニケーションの二つの水準から成り立っています。第一の水準では、エビデンスに基づいた情報を提供し、それが利用者の知識向上や不安軽減に繋がります。さらに、行政のサービスや支援情報も盛り込むことで、地域とのつながりも強化されます。
第二の水準では、必要に応じたタイミングで情報を提供することで、登録者との繋がりを維持します。基本情報として出産予定日や子どもの誕生日、赤ちゃんのニックネームをもとに一方的に情報を送ることなく、双方の関係構築を図っています。この取り組みは、世界中で注目される「テキストメッセージング」の一環として行われています。
きずなメール基金の活動
『きずなメール基金』の初めのアクションとして、通常は有償の「きずなメール事業」に対し基金からの支援を始めることが決定されました。また、この基金は地域の直接的な支援とともに、社会課題に対するテキストメッセージを利用した普及啓発活動にも充てられます。寄付も広く募っており、一人でも多くの子育て当事者に「きずなメール」のメッセージを届けるための協力を呼び掛けています。テキストメッセージによって新しいつながりを生み出し、社会全体の課題解決に貢献することが期待されています。
このように、NPO法人「きずなメール・プロジェクト」は、孤育てを防ぎ、子どもを守るための新たな挑戦をスタートさせました。社会全体の協力を得ながら、多くの子育て当事者に安心感を提供する取り組みが、今後のさらなる広がりを見せることを期待しています。