テレビがもはや「メディアの覇者」でなくなりつつあるとされる中、著者の今道琢也氏が新書『テレビが終わる日』にてその現状を詳細に分析し、明らかにしていく。かつてテレビは国民の生活に欠かせない重要な存在であり、多くの人々の支持を集めていた。しかし、最近の調査によると若年層の視聴時間が劇的に減少している事実が浮き彫りになっている。特に、2012年と2023年を比較すると、10代および20代の視聴時間は半分以下にまで減少している。これは、単に視聴スタイルの変化だけでなく、テレビというメディア自体の信頼性にも問題があることを示している。
新潮社から6月18日に発売されるこの書籍では、テレビ業界が抱えるさまざまな問題とその根本的な要因を探求している。視聴率が低下し、テレビを視聴しない若者が急増する一方で、ネット動画やオンデマンドサービスの普及がその理由として挙げられている。また、著者が引用する総務省のデータによると、10代の約20%、20代の約30%はテレビに一切接触していないという。リアルタイムでテレビを観ることはもちろん、録画やインターネットを介しても視聴することすらない。
今道氏はテレビ視聴の変遷を振り返りながら、視聴者が急激に高齢化していく中で今後のテレビの展望を模索する。視聴者の中心層が60代以上に限られていく中、若者たちがそのふるさとを去った後に何が残るのか?テレビが多様化したコンテンツに対抗できなくなる中、広告収入もネットに対して劣り、その結果として大学生や若手社員の就職先としてテレビ局の人気が急落していることも問題視されている。
加えて、テレビに対する信頼性が損なわれている要因も徹底分析される。過去のスキャンダルや、視聴者との信頼関係の崩壊が噂され、それによってテレビ離れが進行している。今道氏は、ネットでの「とりあえず」が当たり前の時代に、テレビが果たすべき役割及びそれに伴う変革の必要性についても触れながら、多面的に論じている。
著者自身、NHKでの経験を持つ中で、メディアの変革と成長を時折目撃してきた人物であるだけに、その洞察には期待がかかる。本書は単なる批評にとどまらず、テレビの未来に興味があるすべての人にとって、貴重な分析資料となるだろう。今なお多くの人々の生活の中に息づいているテレビというメディアが、どのような道をたどって進化していくのか。果たして、テレビが新たなる「メディアの覇者」となり得る可能性は残されているのか、是非本書を手にとって感じ取ってほしい。
著者の今道琢也氏は1975年に大分県で生まれ、京都大学を卒業後にNHKに入局。テレビの第一線で15年間活動し、その後独立してインターネットでのライティング活動を行っている。彼の豊富な経験と知識は、読者にとって新たな視点を提供してくれるはずだ。書籍は新潮社から6月18日に出版され、税込968円で販売される予定だ。興味のある方は、ぜひ手に取ってみてほしい。
【書籍情報】
【タイトル】テレビが終わる日
【著者】今道琢也
【発売日】6月18日
【造本】新書版
【本体価格】968円(税込)
【ISBN】978-4106110917
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