パレスチナ人女性画家による新たな絵本
ガザ地区出身の若手アーティスト、マラク・マタールが自身の経験を基にした絵本『おばあちゃんの白い鳥~ガザのものがたり~』を日本で9月12日に出版しました。この絵本は、彼女の子供時代の思い出と感情を描いたもので、特にガザでの厳しい日々を過ごした中での希望をテーマにしています。
マラク・マタール氏の背景
1999年にガザで生まれ育ったマラクさんは、2014年のガザ侵攻の際に、家の中に閉じ込められ、絵を描くことで恐怖を紛らわし、自身の未来への希望を抱き続けました。この経験が、彼女のアートの根底にある重要な要素となっています。
今回の絵本は、彼女のこれまでの作品とは異なり、子どもの目線で描かれています。「私の中の子どもに、生の感情のまま、自由に描いてもらいました」とマラクさんは語り、このアプローチが絵本の魅力を引き立てています。
子ども時代の影響
マラクさんの子供時代は、アラビア語に訳された日本のアニメーション「キャプテン翼」や「名探偵コナン」を兄弟たちと楽しんで見ることが多かったそうです。彼女は「日本の桜の花や美しい建築物を見ることは、私の夢の一つでした。この絵本が日本で出版され、日本の読者とつながることができるのは、私にとってとても嬉しいことです。」と述べています。
絵本のメッセージ
『おばあちゃんの白い鳥』は、ガザの現在の状況に思いを馳せるきっかけを与えてくれます。地元の子どもたちが暮らしている今日のガザは、マラクさんが幼い頃に体験した状況とは比べ物にならないほど、厳しい現実が続いています。この絵本を通じて、読者は一人のパレスチナの少女の目から見た世界を感じ取ることができるでしょう。
売上の寄付
本書の売上の一部は、特定非営利法人「パレスチナ子どものキャンペーン」に寄付されます。この取り組みは、パレスチナの子どもたちへの支援を目的としています。
著者のプロフィール
マラク・マタールさんは、母国ガザを離れ、イギリス・ロンドンに在住。彼女のアートはSNSを通じて広まり、世界中で注目を集めています。13歳で絵を描き始め、その才能で全国そして国外での個展を経て、経済的に自立を果たしました。彼女は今後もアートを通じてガザの現状を伝えていくことでしょう。
書誌情報
この絵本は講談社から出版されており、全32ページのオールカラー仕様です。定価は1,980円(税込)で、ISBNは978-4-06-536659-2です。日本の読者にとっても、彼女の物語は新たな視点を与えてくれることでしょう。