ロシア哲学の新視点
2025-08-01 11:39:57
ロシアの死生観を探求する新たな視点: フョードロフとカルサーヴィンの思想
ロシア哲学における“死と復活”への挑戦
早稲田大学の福井祐生次席研究員が発表した新たな研究は、ロシアの思想家ニコライ・フョードロフ(1829-1903)とレフ・カルサーヴィン(1882-1952)という二人の哲学者の死生観に光を当てています。彼らは共に死というテーマに関して深く思索し、その思想は死の克服や宇宙的視座を追求するものでありながら、キリストの死と復活に対する理解には明確な相違があります。
ニコライ・フョードロフの思想
フョードロフは「共同事業の哲学」を構築し、人類全体による復活を理想としました。彼の思想は1990年代のロシア宇宙主義の潮流と結びつき、自然のコントロールや宇宙植民といったアイデアに繋がっています。このようなフョードロフの視点は、彼がキリストの受難を重視せず、その意義を万人のための復活事業から導き出している点で、評価が分かれることがあります。
レフ・カルサーヴィンの批判と思想
一方、カルサーヴィンはフョードロフの思想を批判的に捉え、「死者の魔術的復活」と呼びました。彼はキリストの受難を重視し、「真の死を通じての真の生」が重要であると強調しています。カルサーヴィンにとって、キリストの死は避けられない現実であり、それを通じてのみ人間は真実の生を体験できるという信念がありました。
研究の成果と意義
福井研究員の調査により、カルサーヴィンはフョードロフの思想に対して厳しい姿勢を貫く一方、彼らの策である「全一性」や「多一性」といった概念の共有も見出されました。また、「死の神格化」という造語がカルサーヴィンの著作に登場することにより、彼がフョードロフの思想に共鳴していることが明らかになりました。
この研究は、2025年7月17日に国際学術誌「Studies in East European Thought」に掲載され、いかにロシア哲学が冷戦時代からの地域研究の枠に収まっているのかを問い直し、より広い文化的背景における位置付けを見出すための重要な一歩となることが期待されています。
今後の展望
カルサーヴィンの他の著作も多く残されており、その思想が今後どのように評価されるかに注目が集まっています。福井研究員は、彼らの思想が世界の哲学研究における重要な役割を果たすことを願っています。この研究を通じて、フョードロフとカルサーヴィンというロシアの思想家が新たに注目されることが期待されています。
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