生成AIと生命保険の未来
日本の生命保険業界は、契約件数や給付金支払件数の増加に伴い、支払査定業務の負荷が日々増しています。これにより、業務の効率化と精度向上が求められる中、Finatextグループの株式会社Finatextと株式会社ナウキャスト、さらにメディケア生命保険株式会社が連携し、新たな技術の活用を模索しました。
実証実験の背景
従来の査定業務は、約款の解釈や医療知識、過去の査定事例を基にした専門的な判断が必要です。人材育成には長期にわたる時間がかかり、このプロセスには多くのリソースが必要とされています。そこで、生成AI技術による大幅な業務改善の可能性が注目されました。
メディケア生命では、生成AIの導入を通じ、これらの課題を解決する方法を探ることにしました。技術の進化により、これまで自動化が困難とされていた領域にも、生成AIが適用できる可能性が生まれています。このような背景のもと、2025年9月8日から実証実験(PoC)がスタートしました。
実証実験の概要
この実証実験は、2025年9月から2026年2月にかけて行われ、Phase1とPhase2の二つのフェーズで進行されました。Phase1では初期検証を行い、Phase2では代表的なケースを元に査定処理をAIに実施させ、その結果の精度や安定性を確認しました。
Phase1(2025年9月)
業務に適用できるかどうかの初期検証を行いました。これは小規模なプロトタイプによる定性的評価でした。
Phase2(2025年12月~2026年2月)
ここでは、具体的な投資効果を見込もうとし、精度検証や業務フローの整備を行いました。代理的な情報探索(Agentic RAG)を用いて、AIが必要な情報を自律的に収集し、過去の査定事例を活用する仕組みを構築しました。
さらに、複数の情報タイプに応じて最適なモデルを選ぶマルチモーダルモデルの最適化も行いました。
実証実験の結果
実際の査定業務におけるAIの正答率は90%以上に達しました。また、書類読み取りの精度も約90%と、高い結果が見られました。特に手書きの文字や表現に対してもほぼ完全に近い精度を実現しています。
このような高精度の査定結果が求められる中、入力作業は約1/3、さらに査定工数は約40%も削減できると試算され、お客様へのサービス向上が期待されています。
導入効果と今後の展望
この実証実験から得られた成果をもとに、AIを使った支払査定業務の導入が進められます。特に、査定者の早期育成が期待でき、低経験の担当者でも高品質な業務が行えるようになる点が挙げられます。AIが査定根拠を提示することで、新人の戦力化も進める方向です。
今後は、対象業務の拡大や運用体制の整備を行い、さらなる業務の効率化と高い査定品質の維持に取り組んでいきます。これにより、保険金支払が迅速化され、お客様に対するサービス向上が実現できるでしょう。
企業情報
代表者: 木下 あかね
設立: 2018年12月
所在地: 東京都千代田区九段北一丁目8番10号 住友不動産九段ビル 9階
公式サイト:
Finatext
代表者: 辻中 仁士
設立: 2015年2月
所在地: 東京都千代田区九段北一丁目8番10号 住友不動産九段ビル 9階
公式サイト:
ナウキャスト
代表者: 西野 貴智
設立: 2009年10月
所在地: 東京都江東区深川1-11-12 住友生命清澄パークビル
公式サイト:
メディケア生命