G-HEPプログラムの成果
2024年、特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI)は、エモリー大学ロリンス公衆衛生大学院およびマヒドン大学公衆衛生学部との協力のもと、グローバルヘルス・エデュケーション・プログラム(G-HEP)を開催しました。このプログラムの目的は、国際的な公衆衛生の課題に取り組む若手リーダーを育成することにあります。今年のプログラムには、5カ国から集まった12名の参加者が、約6ヶ月間にわたりオンライン講義やグループワークを行い、フィールドワークも通じて実践的な知識を構築しました。
参加者が直面した課題
プログラムの中では、参加者は4つの主要なケーススタディに基づいて、プラネタリーヘルスに関連する具体的な課題に取り組みました。これにより、参加者たちは、実際のデータに基づいて問題を分析し、解決策を導き出す能力を磨いていきました。以下に各ケーススタディの概要を紹介します。
1. 気候変動下の食料安全保障
タイの郊外コミュニティにおける高齢者と介護者のための適応戦略を追求する中で、持続可能な農業の推進が重要視されました。また、地域コミュニティの能力を強化するための教育や支援システムの導入も必要であるとされ、非感染性疾患(NCD)の管理と栄養へのアクセスの改善に向けた健康政策の実施が求められています。
2. 生物多様性と生態系の保全
タイの自然と動物種を守るためには、生物多様性についての啓発キャンペーンや、生息地の分断化を防ぐための生態コリドーの整備が不可欠です。さらに、国際的なパートナーシップによる技術的および財政的サポートの活用が重要であると認識されました。
3. 水質改善のための水資源管理
サムットプラカーン地域での水質改善を図るためには、リアルタイムの水質データを提供し、関係者間の協力を促進する水管理組織の設立が提案されました。農家や地方自治体、大学とのパートナーシップを強化することでデータ収集や共有が進み、更には気候変動に対する耐塩性作物の普及が求められました。
4. 固形・プラスチック廃棄物の問題
タイでは、管理が行き届かない固形及びプラスチック廃棄物の問題が深刻です。この問題に対し、汚染者負担の原則(PPP)の導入や、企業の社会的責任(CSR)プログラムを通じたステークホルダーの関与を促進する施策が提案されました。また、環境に優しい行動を促進するためのインセンティブ提供も重要になります。
参加者からのメッセージ
プログラムの最後に、各参加者はこのプログラムでの学びが自身の今後のキャリアにどのように役立つかを振り返りました。「異なるバックグラウンドを持つ参加者との交流は、視野を広げる貴重な機会でした」との声が多く聞かれました。
組織の役割と展望
このプログラムは、国際的な協力を通じて若手リーダーたちが政策提言を行う機会を提供します。HGPIの副事務局長、菅原丈二氏は「異なる文化や専門性を持つ参加者が新たなネットワークを築くことができた」と評価しています。これらの経験を通じて、持続可能な社会の実現に向けた知恵を集約し、今後の国際的な課題解決に貢献していくことが期待されています。
学び続ける若手リーダーたち
参加者同士が引き続きネットワークを広げ、国境や分野を超えて連携することで、より効果的な社会変革をもたらすために何ができるのかを常に考え続けることが重要です。このプログラムを通じて得た知識と人脈を活かし、次世代のグローバルヘルスリーダーとして歩み続けていくのです。