弥栄酒造が持つ日本酒へのこだわりと未来への展望
愛知県愛西市に位置する株式会社弥栄酒造は、1865年の創業以来、伝統を重んじつつ現代に通じる日本酒を展開しています。特に注目されるのは、純米大吟醸「弥栄の酒 寿」。この酒は、ただのアルコール飲料ではなく、日本独自の祝い文化が込められた特別な存在です。2026年7月、多くの来場者が集まった「ホテル・レストラン・ショー&FOODEX JAPAN in 関西」では、海外のバイヤーからの注目を浴び、11社からの輸出提案がありました。
しかし、弥栄酒造の代表取締役、山田栄治氏は、これらの提案をすぐには受け入れませんでした。その理由は、日本人が自らの国の祝いの日に「寿」を楽しむ姿を何よりも優先したいからです。日本酒は、日本の風土や食文化の中で育まれてきたものであり、祝いの席には欠かせない存在とされています。これこそが、弥栄酒造が目指す日本酒の在り方です。彼らの理念は、「祝いの席には、『寿』で乾杯」という文化を広めること。
器や食事と共に楽しむ「寿」は、還暦祝い、卒業、就任などの人生のさまざまな節目にピッタリの飲み物です。このような祝い文化を大切にし、弥栄酒造が生産する「寿」は年間1万本に限定。これにより、希少価値と品質を保持しつつ、一つ一つを丁寧に醸すことが重視されています。つまり、量よりも質を追求し、飲む人々の心に残る日本酒作りを目指しているのです。
展示会での多くの来場者からの賛同を受け、弥栄酒造は「海外市場での評価を得る」という選択肢も考えていますが、それは日本の祝い文化を世界の日本人に届けるため。世界で暮らす日本人たちが故郷の記憶を思い出す瞬間を提供する特別な酒にしたい、という願いが込められています。
さらに、「弥栄の酒 寿」は酒米だけでなく、食用米「にこまる」を使用して純米大吟醸を造るという新しい挑戦も行っています。これは、普段の食卓で食べられている米の新たな価値を提供し、日本の農業を支える意味でも重要です。米作りを続ける農家が減少している中で、食用米に酒の価値を見出すことは、農家が安心して米作りを続けられる環境を整える助けとなっています。
展示会で感じた多くの共感は、弥栄酒造の理念が多くの人々に響いている証でもあります。「料理を引き立てる酒」「考え方に共感した」というフィードバックを受け、同社は「ふさわしい場所に届ける」姿勢を保ち続けることで、理想のクオリティを維持しています。
今後も弥栄酒造は、冷静に市場を見つめ、日本の田んぼと祝い文化を未来へつなげる役割を担い続けます。彼らが信じる「祝いの文化」は、日本のアイデンティティそのものであり、次世代に受け継がれていくべきものです。これからの展開に是非目を向けていきたいものです。