地方の空き家を活用した水耕栽培事業が新たな暮らしを提案
兵庫県南あわじ市の新たな取り組み、「S’n’Sベジファーム南あわじ」が注目されています。この事業は、空き物件を利用した水耕栽培のショールーム「あわじのはたけ」が拠点となり、都市部から移住した2名が中心となって運営しています。合同会社ばとんが設立したこのプロジェクトは、農業の未経験者でも容易に始められるような仕組みを整えており、地域の活性化と食料自給率の向上を目指しています。
地方創生の背景と挑戦
日本全体で見ると、2023年現在、食料自給率はカロリーベースで38%と低迷しています。この問題は特に地方における活用されていない空き物件の増加と相まって、地域における安定した生活基盤の喪失をもたらしています。加えて、気候変動による農業生産への影響は深刻であり、持続可能な生産手法の導入は急務です。
そんななか、あわじのはたけはその解決策に挑む地域モデルとしての役割を果たしています。これにより、地元住民だけでなく新たに移住してきた人々も、生活の基盤を築く手助けを受けることができるようになっています。
「育てて、売って、暮らす」新しい仕事のカタチ
日々の運営を行っているのは、移住者の大野さんと高桑さんからなるチームです。彼らは合同会社ばとんとの業務委託契約に基づき、水耕栽培のすべてを手掛けています。利益は出来高制で支払われ、運営の初期費用に関しては地代や光熱費を一部負担することでハードルを下げ、実践的な農業経営の体験を重視しています。
大野さんは長年のサラリーマン生活を終え、淡路島でのリタイア後の生活を夢みて移住しました。「何か新しいことに挑戦したい」と語る彼は、水耕栽培やアクアポニックスを学びながら、暮らしと仕事を両立させようとしています。
一方、高桑さんは旅行好きが元で、人々の移住への興味を持つようになり、名古屋から淡路島へと移住しました。「持続可能な循環型農業に挑戦し、仕事と遊びの両立を図りながら生活を豊かにすること」を目指しています。
今後の展望と地域との連携
あわじのはたけは、農業をただの作業場としてではなく、自身たちの 手で育て、届ける仕事場と生活の場とします。さらに、合同会社ばとんは他地域での展開も計画しており、特に学校給食や福祉施設との連携も視野に入れています。これにより、「あわじのはたけ」を地域食料インフラのモデルとして現地で実践し、地方への労働移住を促進しつつ地域活性化を図ります。
新しい農業のカタチを模索するS’n’Sベジファーム南あわじの活動は、未来の地方をつくる希望の種となることでしょう。今後の展開に目が離せません。