高齢者のフレイル予防に効果的なスマホアプリ「バランス日記」
東京都健康長寿医療センター、女子栄養大学、そして日清オイリオグループの3者は共同で、高齢者のフレイル予防に向けたスマートフォンアプリ「バランス日記~10食品群チェック~」の有効性に関する研究を実施しました。2022年12月から2024年3月までの約1年間、埼玉県内の65歳以上の地域住民を対象に臨床試験が行われ、その結果が発表されました。
研究内容
この研究では、参加者54名を無作為に2つのグループに分け、片方のグループには3ヶ月間アプリを使った食事記録と健康教室への参加を促す介入プログラムを実施。その後、もう片方のグループにも同様のプログラムを実施し、効果を比較しました。アプリでは、10食品群の摂取状況を記録し、健康教室では栄養指導と軽運動指導が行われました。
研究成果
研究の結果、アプリの利用率と健康教室への満足度は非常に高く、介入プログラムは参加者にとって無理なく続けられることが分かりました。特に注目すべきは、食品摂取多様性スコア(DVS)の向上です。両グループで介入後にDVSが有意に改善し、DVS7点以上(1日平均7食品群以上摂取)の割合も大幅に増加しました。これは、フレイル予防において望ましい傾向を示しています。
さらに、下肢機能の改善やBMIの向上なども確認され、アプリと健康教室を組み合わせた介入プログラムがフレイル関連指標に有効であることが実証されました。プログラム終了後も、多くの参加者がアプリによる食事記録を継続しており、多様な食品摂取への意識と実践が持続していることも分かりました。
3者の役割
東京都健康長寿医療センターは、健康長寿と食・栄養に関する知見を提供。女子栄養大学はアプリを使ったヒト試験を実施し、日清オイリオグループはアプリのノウハウと取得データを提供するなど、各機関がそれぞれの専門性を活かした連携体制が研究の成功を支えました。
結論
本研究は、スマートフォンアプリ「バランス日記~10食品群チェック~」と健康教室を組み合わせた介入プログラムが、高齢者のフレイル予防に非常に有効であることを示しました。アプリの継続的な利用と多様な食品摂取を促すことで、高齢者の健康維持・増進に貢献できる可能性が示唆されています。今後、この成果を基に、より効果的なフレイル予防対策の開発・普及が期待されます。
今後の展望
今回の研究成果は、高齢化が進む日本社会において、フレイル予防のための新たな戦略を示唆しています。アプリによる手軽な食事管理と、専門家による指導を組み合わせたアプローチは、多くの高齢者にとってアクセスしやすい手段と言えるでしょう。今後、より広範な地域での展開や、アプリ機能の更なる改善など、更なる研究開発が期待されます。高齢者が健康で自立した生活を送れるよう、この研究成果が社会に貢献することを願っています。