品質意識の重要性とその改善策—上場企業の実態調査から見えた課題とは
はじめに
日本能率協会総合研究所(JMAR)が行った「従業員の品質意識」に関する調査が、業界に衝撃を与えています。この調査は、製造業の上場企業における内部での品質意識と、その実態を探ることを目的としており、特に品質問題が多発する現代において、重大な示唆を提供しています。調査の結果から、企業が直面している品質問題の背景には、内部統制や組織風土の課題が浮かび上がってきました。
調査の概要
2024年6月12日から14日の間に実施されたこの調査は、上場企業の生産・製造部門または開発部門に勤務する社員を対象とし、インターネットを通じて行われました。調査結果からは、品質に対する従業員の意識や経験が、企業の生産体制にどのように影響しているかが明らかにされつつあります。
調査結果のポイント
1.
内部統制の不全
調査結果によると、過去5年間に勤務先で品質問題を経験した従業員は、上場企業の生産・製造や開発現場において約60%に上ります。この多くは「対外的な問題」であり、「社内で出荷前に解決した問題」はわずか4%にとどまっています。このことから、明らかに内部統制が不十分であり、品質問題が外部へと影響を及ぼしている実態が浮き彫りになりました。
2.
品質基準の遵守状況
調査では、15%の従業員が、品質規定や基準に沿わない業務を見たことがあると回答しています。その中で、約60%は同じ品質問題が再発していることを認識しており、内部統制が柔軟に機能していないことが窺えます。
3.
組織風土の影響
約60%の従業員が、日々の業務の中で品質問題に繋がる経験を持っており、さらに、4割が「品質に関する違和感」を感じたことがあるものの、その中の25%が報告していないという結果が出ました。この組織風土における課題が、品質問題と関連している可能性が高いと考えられます。
4.
経営陣の意識
経営陣の品質に関する考えが、従業員の約60%には「問題の防止または低減」と受け止められています。しかし、「高品質企業として競争力向上」との認識はわずか15%で、現状の認識にも課題が残っています。
調査結果の重要性
この調査結果は、品質問題が企業競争力に直結していることを示しています。品質不正が多発する背景には、企業文化や内部統制が影響しているため、これらの仕組みの見直しが急務とされています。従業員の声を反映した施策が求められ、実際に成功している企業も増えてきています。
結論
今回の「従業員の品質意識」調査は、日本企業が直面する品質管理の現況を鮮明にしただけでなく、改善の余地が大いに存在することを示しました。企業は、品質意識を高めるだけでなく、内部統制の強化や組織風土の改善に努める必要があります。これにより、未然防止や競争力の強化が期待できるでしょう。品質文化が根付く未来に向けて、各企業の対応が急がれるところです。
参考リンク