インドネシアのオランウータン生息地で起きている森林破壊
最近発表されたレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の報告書『包囲下のオランウータンの首都』は、インドネシア・スマトラ島のラワ・シンキル野生生物保護区での違法なパーム油生産の実態を明らかにしました。この地域は、生物多様性が豊かで、「世界のオランウータンの首都」とも称される重要な生態系です。しかし、最新の衛星画像によって、652ヘクタール(東京ドーム約140個分)の違法アブラヤシ農園が存在し、その中の453ヘクタールは果実生産が可能だとされています。これにより、違法に生産されたパーム油が世界中の消費財企業のサプライチェーンに紛れ込むリスクが高まっています。
調査の詳細と発見
2024年7月に実施された調査では、エアバス社の「プレアデス・ネオ」衛星を用いてラワ・シンキル保護区の上空からの飛行撮影を行いました。この衛星は30cmという高解像度を持ち、今まで見逃されていた違法行為を捉えることに成功しました。調査結果は消費財企業と金融機関への影響にも言及しており、いくつかの有名企業や銀行が違法パーム油の取り扱いや資金提供を通じてリスクにさらされていることが示されています。
消費財企業とそのリスク
調査対象に挙げられた企業には、日清食品やネスレ、プロクター&ギャンブルといった大手が含まれています。これらの企業は、違法に生産されたパーム油を使っている製油企業から パーム油を調達していることが判明し、法的な責任を問われる可能性があります。また、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行も、資金提供先の企業が違法パーム油を使用している可能性があるため、リスクを抱えています。
加速する森林伐採と新たな抜け穴
同報告書では、ラワ・シンキル保護区内での森林伐採が2021年から2023年にかけて4倍に増加したことも指摘されています。この地域は法律で保護されているにもかかわらず、2020年の森林破壊禁止法(EUDR)の基準を無視した伐採が続いているのです。調査では、特に裕福な土地の投機家が小規模農家を装い、違法伐採への責任を免れる「パーム油ロンダリング」現象も明らかになりました。
環境保護の必要性
RANの専門家は、違法に生産されたパーム油が消費財に広がっている現実を強調し、消費者に何を買っているかを再考させる必要があると訴えています。報告書で示された情報は、環境危機を回避するためには企業と金融機関が協力し、持続可能な解決策を模索しなければならないという強いメッセージを伝えています。
結論
RANは、持続可能な農業の重要性を訴え、熱帯低地林と泥炭地の保護を優先しつつ、地域に根ざした農業を育成することが急務であると述べています。私たち一人ひとりが、日常的に利用する商品がどのように生産されているかを理解し、環境搭載の選択をすることが求められています。