蓮井幹生の写真展が示す震災後の美しさと祈り
現代アートギャラリー「YUGEN Gallery」(東京・南青山)では、2025年1月18日から2月2日まで、写真家・蓮井幹生による写真展「朽ちゆく果てにも美は宿る」が開催されます。この展覧会は、2024年元日に発生した能登半島地震により損傷した陶器の姿を記録した作品を中心に構成されており、会期中の1月19日には特別なレセプションが行われました。
特別レセプションの様子
レセプションでは、蓮井幹生によるトークセッションや、オーボエ奏者の三輪あかね氏、ダンサーの上村なおか氏によるパフォーマンスも行われ、訪れた人々は震災や社会的な課題について深く考える機会を得ました。蓮井は、東日本大震災直後から東北地域で復興支援を行ってきた経歴を持ち、過去の経験が本展のテーマにも大きく影響を与えています。
三輪氏と上村氏も、それぞれ震災を直接体験した側であり、彼らのパフォーマンスは「できることで支援する」という共通の理念を表現していました。特に、上村氏は能登地震の影響を受けて帰省していた際に被災したという背景があり、彼女の動きには感情が込められていた。
トークセッションの内容
トークセッションでは、蓮井と石川県の九谷焼の窯元「錦山窯」の四代 吉田幸央氏および吉田るみ子氏が対話し、展覧会のコンセプトや陶器について深く語り合いました。特筆すべきは、損傷した名作陶器を「今在る姿」としてそのまま受け入れる姿勢です。通常、陶器は修復されるものですが、彼らは壊れたものに新たな価値を見出し、その美を引き出す試みをしています。
「壊れたものをどう扱うか」というテーマは、アートを越えた人々の心に響く問いかけとなりました。この展示を通じて、参加者は壊れたものに潜む美しさを再考し、震災を経験した人々が持つ思いに触れる機会となったのです。
パフォーマンスの特異性
トークセッションの後には、オーボエの音色とダンスが絡むパフォーマンスが行われました。三輪氏の演奏と上村氏の身体表現が、精緻に絡み合い、美しさと緊張感のある瞬間が生まれました。特にお互いの呼吸を合わせるシーンは、壊れたものを見つめなぜ美が宿るのかを感じさせ、感動の瞬間となりました。
「朽ちゆくものにも美は宿る」というメッセージが、音楽とダンスを通じてより明確に表現されました。このパフォーマンスは震災を経験した人々の「祈り」を象徴するもので、観客の心に深い感動を与えました。
展覧会の意義
このレセプションは、震災後の新たな視点から美を見つめる機会を提供しました。蓮井幹生の写真、ダンス、音楽が一体となった体験を通じて、来場者は心に響くひとときを過ごしたことでしょう。
また、本展は2025年3月には福岡に巡回展示が予定されており、損傷した陶器が映し出す美とそれに込められた想いを再び多くの人々に伝えることになるでしょう。
最後に、今回の展覧会は震災復興支援のために特別に計画されたものであり、収益の一部は復興支援に寄付されるとのことです。来場者には彼らの思いを感じ取っていただきたいと思います。