子どもたちの睡眠に関する調査結果とその意義
毎年、3月18日の「睡眠の日」に寄せて、公益財団法人博報堂教育財団の子ども研究所が行っている「子どもの睡眠調査」の結果が発表されました。この調査は、小学4年生から中学3年生を対象にし、子どもたちの睡眠状況や意識に焦点を当てたもので、その結果に基づいて私たちが知るべきことについて考えていきます。
調査によると、小学生の平均睡眠時間は8時間56分、中学生は7時間57分であり、これは厚生労働省が推奨している睡眠時間をわずかに下回る結果となりました。しかし、驚くべきことに、子どもたちの約6割以上が「もっと夜遅くまで起きていたい」と感じていることが明らかになりました。
学校の日の就寝・起床時刻
平日、学校がある日の平均就寝時刻は、小学生で21時46分、中学生で22時46分、そして平均起床時刻はどちらも6時42分でした。この結果からは、学校の日の生活リズムが見えてきます。もちろん、社会生活や学校生活とのバランスが求められますが、それでも子どもたちの理想と現実のギャップが浮き彫りになっています。
日々の過ごし方の動向
日常生活の中での過ごし方を見てみましょう。夕食後の時間の過ごし方では、小中学生ともに1位が「お風呂に入る・シャワーをあびる」という結果でしたが、その後の過ごし方には違いが見られました。
小学生では「家族と話す」が2位となり、中学生は「動画を見る」が2位。理想の過ごし方として、小学生はやはり「ゲームをする」が1位を獲得しています。こうしたデータから、子どもたちが持つ「じぶん時間」の重要性が感じられます。
特に男女別で比較すると、ゲームを好む男子に対し、SNSを用いたコミュニケーションを重視する女子の姿も見えます。これは、デジタルネイティブ世代ならではの特性と言えるでしょう。
寝る直前の行動とスマホの影響
調査によると、小学生の約31%、中学生の55.7%が布団の中でスマホやゲーム機などを持ち込んでいることが明らかになりました。この行動は睡眠時間に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
特に、平均より短い睡眠S層にいる子どもたちは、寝る前に動画を見たりゲームをしたりする傾向があり、これが睡眠の質を低下させている可能性が高いと考えられます。
家族との就寝環境
小学4年生までの子どもたちは、多くが家族と同じ部屋で寝ていることも興味深い結果です。小学生の約70%が家族と同室で寝る一方、中学生では60%が独り寝をしているそうです。この世代間の違いもまた、子どもたちの成長過程での変化を示唆しています。
日中の眠気について
さらに注目すべきなのは、学校に通う子どもたちが日中に眠気を感じている割合が約70%を超えていることです。特に中学生の睡眠S層は、日中に眠気を感じる割合が90%近くにも及ぶとのこと。このため、学校生活における昼寝の必要性が改めて問われています。
睡眠の重要性を考える
相良労働衛生コンサルタント事務所の相良雄一郎先生は、子どもたちの成長期における睡眠の重要性について触れています。成長ホルモンは睡眠中、特に深睡眠のときに分泌されるため、質の高い睡眠は不可欠です。就寝時間の先延ばしや生活リズムの崩れは、多くの子どもたちの健康にも影響を及ぼします。
この調査から見えることは、睡眠の質と量を改善するために、子どもたちに「今のあなたの睡眠が、将来のあなたをつくる」というメッセージを伝えることが大切です。子どもたちが健康的な生活習慣を身につけ、自立した大人に成長するためには、私たち大人が導く役割を果たさなくてはならないのです。
今後も子どもたちの睡眠と生活スタイルについての研究が進むことを願いつつ、私たちもその変化に注意を払い、できるだけサポートしていきたいと考えます。