医家100年の物語が描く医療の真実
帚木蓬生の最新作『花散る里の病棟』が、10月29日に発売されます。この作品は、著者自身が作家であり開業医であることから生まれた医療に対する深い思索の結晶です。医師としての使命感や職業の本質を追求した内容となっており、多くの読者の心に響くことでしょう。
著者の帚木蓬生は、1947年に福岡県で生まれ、東京大学仏文科を卒業後にTBSでテレビ制作に携わりましたが、医学への情熱に駆られ九州大学医学部に進学しました。精神科医としての経験をもとに描かれる本書は、医療という職業に対する万感の想いが込められています。
医師の理想と現実
本書は、医師が直面する厳しい現実と、患者に向き合う誠実さがテーマとなっています。帚木は「町医者こそが医師という職業の集大成」だと語ります。過去の代々の医家の姿を通じて、時代に翻弄されながらも地域に根ざし、患者と共に生きる姿を鮮やかに描いています。
物語の中には、初代は「虫医者」として地域に信頼された存在、二代目は軍医として戦地で命を救った勇気、三代目は地元で内科医院を営む親しみやすさ、そして四代目は先端医療に取り組む外科医としての責任感がそれぞれ描かれています。時代の波を越え、彼らは地域と患者に寄り添い、医療の本質を体現していくのです。
アナログな診療の価値
著者は開業医として地域に密着し、患者の多様な訴えや症状に耳を傾けてきました。白衣を脱ぎ、普段着で診療をすることで患者との距離を縮める姿勢が、信頼と共感を生んでいます。時には患者と涙を分かち合い、喜びを共にすることで、彼らの心の支えとなることが医師の本分ではないかと著者は問いかけます。
特別解説による深い理解
さらに、俳優の佐野史郎による特別解説が収められています。彼自身も医家に生まれたことから、開業医の苦悩や喜びを理解する視点から、この物語にさらなる深みを与えています。彼の解説は、作品に込められた医療のリアリティを理解する助けになるでしょう。
書籍情報
『花散る里の病棟』は文庫本として、定価880円(税込)で10月29日より発売されます。ISBNは978-4-10-118832-4です。医療に対する深い考察や、開業医のリアルな姿を感じ取ることができる一冊となっています。興味のある方は、ぜひ手に取ってみてください。
書籍リンク