こどもたちの命を守るために大人ができること
2023年1月26日、長野県長野市にて「学ぼう心のサイン 守ろう10代の命」と題した講演会がこども家庭庁の主催で開催されました。このイベントは、こどもたちが自ら命を絶つという悲劇を防ぐための取り組みであり、保護者や大人たちに向けた自殺対策をテーマにしています。
講演会の概要
講演会は、基調講演とパネルディスカッションの2部構成となっており、深刻な悩みを抱えるこどもたちが発する心のサインに焦点を当てて進行されました。基調講演では、NPO法人OVAの代表理事で精神保健福祉士の伊藤次郎氏が、こどもの自殺の現状とその背景について説明しました。
伊藤氏は「希死念慮を持つ若者の約60%が誰にも相談していない」と述べ、周囲の大人がこどもたちのSOSに気づくことが重要だと強調しました。このメッセージは、講演会に集まった多くの大人たちにとって、非常に響く内容となりました。
パネルディスカッション
続いて行われたパネルディスカッションでは、エッセイストの小島慶子氏、NPO法人第3の家族の奥村春香氏、長野日本大学高等学校スクールカウンセラーの宮尾弘子氏が加わり、さまざまな視点から子どもたちの心の問題に迫りました。
小島氏は自身の10代の経験を振り返り、「自分が感じていた悩みを表現できたのは30代になってからだった」と語り、周囲に寄り添う存在の重要性を訴えました。このような気づきは、多くの参加者にとって、日常生活に生かすべき教訓となったことでしょう。
また、奥村氏は「寄り添わない支援」を訪ねることの重要性を指摘し、単に表面的な支援ではなく、しっかりとしたサポート体制が必要だと説明しました。宮尾氏も、学校での居場所づくりの重要性を強調し、こどもたちとの信頼関係を築くことが何より大切だと述べました。
緊急性を感じる自殺問題
近年、こどもたちの自殺率が高止まりしており、令和6年度には527人(暫定値)と過去最多が予測されています。この現状を受け、こども家庭庁は今年度から「こどもの自殺対策の推進に向けたデジタル広報啓発事業」を開始しました。これにより、こどもたちが大人に相談しやすい環境を整える取り組みが進められています。
長野県は「子どもの自殺ゼロ」を掲げ、取り組みも全国的に知られており、県知事の阿部守一氏も講演会において、県民に協力を求めました。自殺対策の実現に向け、周囲の大人がこどもたちの助けが必要であることを忘れずにいることが、何よりも大切であるというメッセージが提唱されました。
結論
子どもたちが感じる不安や悩み、さらにはSOSのサインを見逃さないためには、大人が積極的に関わり、寄り添う姿勢が求められます。長野の講演会は、そのための第一歩として非常に意義深いものであり、多くの人々が参加したことによって、少しずつですが、こどもたちの命を守る社会の実現へとつながっていくことに期待が寄せられています。