南極の大気流動
2025-11-06 11:39:43

南極の大気流動を解明するベリリウム7の新研究成果

南極の大気流動を解明するベリリウム7の新研究成果



国立極地研究所の研究チームが、2014年から2017年の間に実施した南極観測によって得られた数々の高時間解像度データから、新たに南極域の大気循環に関する重要な知見を報告しました。この研究では放射性同位元素ベリリウム7(⁷Be)に焦点を当て、特に成層圏からの物質輸送に関する新しいメカニズムが明らかになったのです。

研究の背景


ベリリウム7は宇宙線によって高層大気中で生成される放射性同位元素で、宇宙からの高エネルギー粒子が大気中の原子と衝突することで生じます。⁷Beはその後、約53.2日でリチウム7という安定な物質に崩壊し、周囲のエアロゾルに付着しながら大気中を移動します。このように、⁷Beを測定することでその立ち位置や生成過程を知る手助けになります。これまでの研究で中緯度地域で高い濃度が観測されていましたが、南極の沿岸地域でも比較的高い濃度が示唆されていました。

研究の内容と成果


本研究では、南極観測船「しらせ」および昭和基地近隣の観測ポイントで、1日または半日ごとにフィルタを交換して⁷Be濃度を解析しました。この新しい観測手法によって、低気圧や高気圧といった気象システムがもたらす大気の変動が観測されました。具体的には、低気圧が通過する際には⁷Be濃度が高くなることが確認され、また、カタバ風と呼ばれる内陸から吹き降りる風による大気の輸送も見逃せません。

さらに、分析の結果、南極の大気中では夜間に⁷Be濃度が高まり、昼間に低くなる傾向が明らかになりました。この現象は、カタバ風が高い場所から低い場所へと空気を輸送することで、成層圏の大気が沿岸部に到達することを示しています。これにより、南極特有の気象システムと⁷Be濃度との関係が新たに解明されたことになります。

今後の展望


南極の昭和基地では今後も観測が続けられ、2020年から2022年にかけての日々のデータが収集されています。これにより、地上の⁷Be濃度と成層圏での生成量の長期的な関係を探ることが期待されています。また、放射性のトレーサーであるベリリウム7だけでなく、陸面から来るラドンなどの他の物質も調査することで、さらに深い大気の理解へとつながるでしょう。

今後、これらの研究成果は、地球規模での大気の混合や物質の輸送メカニズムの解明に寄与し、環境問題の理解や対策にも役立つことが期待されています。

発表論文


本研究成果は、「Journal of Geophysical Research: Atmospheres」に掲載されており、詳細なデータや結果が記載されています。この研究は、南極観測事業プロジェクトによる支援を受けて実施されました。


画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

画像6

会社情報

会社名
岐阜大学
住所
電話番号

関連リンク

サードペディア百科事典: 南極 ベリリウム7 大気循環

Wiki3: 南極 ベリリウム7 大気循環

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。