フィデリティ調査:日本の若年層の資産形成は進むも、専門家への相談は後手に回る
フィデリティ投信株式会社が発表した「フィデリティ・グローバル・センチメント・サーベイ2023」は、23カ国・地域の26,000人を対象に、ウェルビーイングや金融行動、仕事に関する調査を実施しました。本調査は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった2021年から開始され、今回で3回目となります。
調査結果によると、日本の若年層では、新NISAや株高を背景に資産形成が進んでいるものの、お金に関するアドバイスの入手先として、専門家ではなく、身近な人やSNSが人気となっています。これは、世界的に見ても珍しい現象です。
フィデリティ・インスティテュート首席研究員の浦田春河氏は、SNSから得られる情報は、個々人の状況に合わせた資産形成には不向きであり、専門家からのアドバイスをもっと気軽に活用できる環境を整えることが、日本の資産運用立国としての発展に不可欠だと指摘しています。
自社株式を活用した報酬・福利厚生制度の普及率は調査対象国で最低
一方、自社株式を活用した報酬・福利厚生制度については、日本は調査対象国の中で最も低い普及率となっています。従業員への自社株式付与は、人材採用やエンゲージメントの向上に役立つだけでなく、株式保有を普及させることで「貯蓄から投資」への促進にも繋がると期待されています。そのため、政府は現在、制度の簡素化を議論していますが、早急な改正が求められます。
仕事への満足度は最も低いものの、離職を考える割合も最も低い
日本の労働者は、調査対象国の中で最も低い仕事への満足度を示しました。しかし、今後6か月以内に離職することを考えている割合も、同様に最も低い結果となっています。このことから、日本の労働者は、仕事への満足度は低くても、すぐに転職することを考えない傾向にあることがわかります。
この理由として、離職を考えるきっかけとして「やりがいがない」「仕事量が多い」といった消極的な項目が多く、一方で「キャリア形成」といった積極的な理由が上位に挙がってこない点が挙げられます。
インフレの影響は他の国よりも大きくなっている
多くの国では、インフレの影響が前回調査よりも減少している一方で、日本ではインフレが老後資金への不安を押し上げる形となり、インフレと老後資金の不足に対するストレスが大きくなっています。
まとめ
フィデリティ・グローバル・センチメント・サーベイ2023の結果は、日本の金融行動や労働状況に関する興味深い現状を示しています。若年層の資産形成が進んでいる一方で、専門家への相談や自社株式を活用した報酬・福利厚生制度の普及は遅れている現状が明らかになりました。これらの課題を解決することで、日本の金融市場や労働市場のさらなる発展が期待されます。
フィデリティ投信株式会社について
フィデリティ投信株式会社は、独立系資産運用グループのフィデリティ・インターナショナルの一員として、投資信託や企業年金、機関投資家向け運用商品・サービスを提供する資産運用会社です。