山本雄基 個展「Duality」: 透明な層と円の重なりが織りなす、深淵な色彩の世界
2024年7月13日(土)から8月2日(金)まで、大阪のN projectでは、札幌を拠点に活動するアーティスト山本雄基の個展「Duality」が開催される。
山本雄基は、綿布にジェッソを塗布した下地に、透明なメディウムによる層と円形の描画層を重ねるという、シンプルながらも緻密な手法で作品を制作している。この手法によって生み出される絵画表面は、まるで凪いだ水面を覗き込むように、下層の色彩の気配を感じさせながら、同時に、上に重なるレイヤーの影響を受けて、表面に近い色面ほど彩度が高くなるという独特の奥行きを持つ。
山本雄基の作品の魅力は、透明な層という緩衝材を自在に操ることで、描画された実際の色彩のみならず、層を重ねることで生まれる新たな色彩が鑑賞者の視覚に働きかける点にある。その稀有な体験は、観る者を作品の世界へと引き込み、色彩の奥深さ、そしてそこに潜む深淵な美しさへと誘う。
今回の個展「Duality」では、作品制作における試行錯誤の中で作家が発見した様々な二重性を考察しながら、山本雄基の現在地を照らす、小品から大作まで16点の新作が展示される。
特に注目すべきは、山本雄基が独自に開発したアプリ「Random Circle Drawing System(RCDS)」の存在だ。このアプリは、円の数、層の数、色の範囲、属性などの数値を入力することで、ランダムに元絵を自動生成することができる。このアプリを用いることで、山本雄基は自身の描画システムをさらに進化させ、より自由な表現を獲得した。
しかし、山本雄基は「数値入力だけで作品をいくらでも生成できるなら、もうやることがなくなるのかも?」という疑問を呈し、デジタルの元絵を実作に変換する際のズレや、アプリ操作における感覚的な要素が、作品に新たな深みを与えていることを強調する。アプリはあくまで道具であり、それを使いこなすのは、人間の感性と創造力であることを改めて認識させられる。
「Duality」というタイトルには、円とヴォイド、透明と不透明、自分とコンピュータの判断差の重ね合わせなど、作品に見られる二重性を象徴する意味が込められている。
今回の個展は、山本雄基のこれまでの作品制作の軌跡と、新たな表現に挑戦し続ける彼の姿を、同時に見ることができる貴重な機会となるだろう。ぜひ足を運び、透明な層と円の重なりが織りなす、深淵な色彩の世界を体感してみてほしい。
個展概要
山本雄基 個展「Duality」
会期: 2024年7月13日(土) - 8月2日(金)
開廊時間: 月-金 10:00-17:00、土 11:00-18:00、日祝休廊
会場: N project
住所: 〒530-0047 大阪市北区西天満5-8-8 2F
アクセス: JR東西線「大阪天満宮駅」、大阪メトロ谷町線・堺筋線「南森町駅」1番出口から徒歩5分
お問い合わせ: N project(株式会社ぬかが)
E-mail: [email protected]
Tel: 06-6362-1038
Web site: https://n-project.art
Instagram: @n_project_nukaga