地域歯科医療の現状を見つめる『第15回 歯科プレスセミナー』
2024年10月29日(火)、東京都千代田区のアルカディア市ヶ谷およびオンラインにて『第15回 歯科プレスセミナー』が開催されました。一般社団法人日本私立歯科大学協会が主催するこのセミナーは、地域の歯科医療を取り巻く現状や将来の展望を探ることを目的としています。
セミナーの概要
今回のテーマは「このままで大丈夫?!我が国の地域歯科医療」。歯科医師数の減少が問題となる中、地域における歯科医療の偏在が深刻であることが、基調講演やパネルトークを通じて明らかにされました。
聴衆には約70名の報道関係者や専門家が集まり、歯科医療の重要性とその現状に対する関心を示していました。
基調講演の内容
セミナーの基調講演には、公益社団法人日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構の主任研究員、恒石美登里氏が登壇。彼は、健康寿命の延伸にとって歯科医療が果たす役割について詳述しました。特に、歯科医師数の減少がもたらす影響や、無歯科医地区が増加している現状について警鐘を鳴らしました。
恒石氏は「歯と口腔の健康は全身の健康に大きな影響を与える」と強調し、特に高齢者の認知症予防において、歯科医療の重要性が増していると述べました。歯を失うことで認知症のリスクが高まることが最新の研究で明らかになっており、歯科医療が国民の健康を支えるために不可欠な役割を果たすとの見解を示しました。
パネルトークでの議論
パネルトークは、日本私立歯科大学協会の専務理事、櫻井孝氏がコーディネーターとして進行し、創生医療法人の院長たちが地域における歯科医療の現状について意見を交わしました。
まず登壇したのは、岩井歯科医院の岩井宏之院長。彼は北海道における無歯科医地区が増加している現状を指摘し、老齢歯科医師が増える中で地域医療がどのように維持されるべきかを問いました。続いて澄川歯科医院の澄川裕之院長が、中山間地域における歯科医師の不足やその影響について説明。渋谷歯科診療所の渋谷昌史院長は、離島の多い長崎県での歯科医師数が現時点で安定していることを伝えつつ、今後は地域偏在の解消に向けた取り組みが必要であると訴えました。
今後の取り組み
このセミナーを通じて浮かび上がったのは、歯科医療の治療から予防・管理へのシフトです。現代の患者は、より質の高い治療を求める傾向が強く、歯科医師は州内外から訪れる多様なニーズに応える必要があります。さらに、在宅医療や訪問歯科診療を進化させるために、AI技術の導入や業務の効率化が求められています。多職種協働の重要性も訴えられ、歯科医師のみならず、歯科衛生士らの人材育成も喫緊の課題として挙げられました。
また、地域の学生たちへの歯科医療の魅力発信や、若者が地域に留まるための支援策についても話し合われ、今後の歯科医療が持つ可能性について参加者全員で真剣に考える機会となりました。
まとめ
第15回歯科プレスセミナーでは、地域歯科医療の現状と課題に対する理解が深まりました。次回への期待とともに、参加者たちは持続可能な地域医療の実現に向けた新たなスタートを切ることになりそうです。また、今後も業界の発展に寄与するための情報発信が期待されます。