中古マンションの心理的瑕疵と市場価値
中古マンション市場において、「心理的瑕疵」という言葉は頻繁に話題に上がります。これは、居住者が心理的負担や嫌悪感を抱く出来事が発生した物件を指し、具体的には自殺や他殺、孤独死、事故死などがあります。このような物件は購入希望者に敬遠されることが多く、結果として価格が下がるという一般的な認識があります。
しかし、港区の中古マンションに関する最近の調査では、心理的瑕疵が同じマンション内の他住戸の価格にまで影響するのかについて疑問が投げかけられました。今回の研究は、マンションリサーチ株式会社の福嶋総研が行ったもので、過去4年間にわたるデータを元にしたものです。具体的には、心理的瑕疵が発生した後に他の住戸の価格にどのような変化があったのかを調査しました。
調査方法と対象
調査には、2009年から2021年に港区で心理的瑕疵が発生した中古マンションのデータが使用されました。選定された物件は、築年数や立地条件が異なる20棟であり、心理的瑕疵の発生前後の価格推移を分析しました。特に注目されたのは、実際に心理的瑕疵があった住戸ではなく、同じマンション内における他の住戸の成約価格です。
この分析により、心理的瑕疵が発生した際に売出件数が急増するかどうかも確認されました。市場全体に影響が及ぶのであれば、売却志向の変化がみられるはずです。
調査結果の概要
調査の結果、心理的瑕疵が発生しても、同じマンションの別住戸の価格が下がる傾向は少ないと明らかになりました。調査対象の20棟の中で、心理的瑕疵発生前後に価格が下落したのは僅か2棟でした。この2棟は1975年以前に建築された古いマンションであり、市場全体の要因、つまり老朽化の影響が影響していた可能性が高いとされています。
また、調査対象マンションの多くが、港区全体の平均価格の上昇と同様の伸びを見せており、心理的瑕疵が「価格を上げにくくする」要因にはなっていないことも観察されました。売出件数の動向も、心理的瑕疵が発生したときに急増するという明確な証拠は見つかりませんでした。
港区市場の背景
2009年から2021年にかけて、港区の中古マンション市場は都心回帰や投資需要の高まり、そして低金利といった背景のもとで強い上昇トレンドを示しました。この経済状況は、心理的瑕疵といったネガティブな要因の影響を相対的に薄める役割を果たしているようです。
結論
この研究から得た最大の結論は、心理的瑕疵がもたらす影響は、特定の住戸に限定されるということです。同じマンション内の他の住戸の価格までは影響を及ぼすことは少ないと考えられ、特に需要が強い都心エリアでは市場の相場に吸収される傾向が強いことが示されています。
もちろん、特異な事例では心理的瑕疵が影響を与えることもあるでしょうが、データに基づいた今回の港区での調査結果ではそのような傾向は確認されませんでした。
今後は、他の地域でも同様の調査を行い、さらなるデータ収集を行っていく予定です。これにより、不動産市場における心理的瑕疵の影響をより詳細に理解する一助となるでしょう。