ネットが総理になったらどうなるのか?
最近、SNSプラットフォーム上での迷惑行為が名を馳せ、炎上騒動が後を絶たない現代社会。その影響力は、単なる「いいね」の数を超え、まるで法案が決定されるかのような状況を生み出しています。本書『もしもネットが総理になったら』では、そんな状況をユーモラスかつ鋭く捉え、私たちに新たな視点を提供しています。
もしネットが総理になったとしたら
本書のストーリーは、「もしもネットそのものが総理に就任したら」という仮想の世界を描いています。この国では、政策がバズ数によって判断され、影響力者が大臣に雇われ、発信しない人は社会から“透明化”されてしまうという危険なシナリオが展開されます。読者は、この滑稽さの中に潜む現実的な不安を感じることでしょう。
承認欲求と社会的存在
また、特筆すべきは「承認欲求基本法」という設定です。この法律により、毎月の自己アピール投稿が義務付けられ、一定の反応がなければ社会的存在から外されるという恐ろしい現実が描かれます。SNSの評価が全てを左右するこの世の中での苦悩と、それにともなう人間性の喪失が浮き彫りになります。
インフルエンサー内閣の誕生
さらに、インフルエンサー内閣という概念が提示されます。ここでは、フォロワー数が大臣の選出基準となり、政策はライブ配信のコメント流速で決まるという、現実では考えられない状況が展開されます。このアイデアは、現代社会において人気が正義とされる傾向への鋭い批評とも言えます。
声が消える時代
本書は、「静かな人」の失踪をも描写します。バズらない声はログから消え、検索すら出来なくなる世界。この状況において、私たちはどうやって自分の声を発信し続けることができるのでしょうか。結局、現代における本当に大切な声とは何なのか、深く考えさせられます。
炎上経済にブレーキをかける
最近のSNSでは、迷惑行為が瞬時に拡散され、その結果として炎上が起きることが多くなっています。このような現象は、「瞬時の注目」が誤解を呼び、過激な行為を引き起こすのです。本書は、この炎上経済に対しブレーキをかけ、「誰の、どんな声を大切にすべきか」を穏やかに問いかけてくれます。
著者について
著者のひらかわ ゆうき氏は、幼児教育や保育に長年携わってきた経験を活かし、親子や社会の姿をユーモアを交えて描いています。『妄想総理シリーズ』を中心に、近年では『AIと話した7つのこと』シリーズや現代版イソップ童話など、多くのユニークな作品を発表しています。
まとめ
『もしもネットが総理になったら』は、SF的な仮想設定を通じて、現代社会の問題点に鋭く切り込んでいます。私たちがどのように発信し、社会と向き合うのか、そのヒントが詰まった一冊です。