成層圏スマートフォン通信の新時代
2025年2月、株式会社Space CompassとNTTドコモは、ケニア共和国ライキピアカウンティにおいて、成層圏を飛行する高高度プラットフォームHAPSを活用したスマートフォン向けのデータ通信実証実験に成功しました。この実験は、地上のLTE基地局から送信される電波が、成層圏を経由して地上のスマートフォンに届くかを検証するもので、通信技術にとって画期的な一歩となります。
実験の詳細
実験の中心となったのは、AALTO HAPS Limitedが製造した小型固定翼HAPS「Zephyr」です。このHAPSは、高度約20kmの成層圏を数ヶ月にわたり飛行できる能力を持ち、通信中継装置を搭載しています。地上からのLTE信号を受信し、その信号をHAPSを使って地上のスマートフォンに送信する仕組みが導入されました。
実際の通信では、地上に設置されたLTE基地局からHAPSへのデータ送信が行われ、最終的に地上のスマートフォンに4.66Mbps以上の速度でデータが届けられることが確認されました。HAPS機体は一定のエリアに通信範囲を設けるため、地上の特定地点に向けてビームを集中させる技術も実装されています。これにより、成層圏を利用した通信方式が確立され、その成功は世界初の出来事となりました。
未来の展望
Space Compassとドコモは、今回の実験結果を基にして、2026年にHAPSの商用化を目指しています。超広範囲のカバレッジをカバーする宇宙RAN(Radio Access Network)の開発に取り組み、空や海、宇宙での通信の未来を開拓する意欲を示しています。さらに、この研究成果の一部は、NICTによる革新情報通信技術基金事業として支援を受けています。
Space CompassとNTTドコモの役割
Space Compassは、NTTとスカパーJSATが共同設立した会社で、宇宙データセンターや宇宙ネットワークの構築を目指しています。この新たな通信革命は、持続可能な社会の実現につながると期待されています。一方、NTTドコモは日本国内で最大手の携帯電話事業者であり、新たなコミュニケーション文化の創造に向けて努力を続けています。
結論
この実証実験は、単なる技術の成果ではなく、今後の通信の在り方を大きく変えるポテンシャルを秘めています。成層圏から直接スマートフォンにデータを届ける通信方式が一般的になる日が来るかもしれません。持続可能な社会の実現に向けて、ますます期待が高まります。