葛飾北斎の晩年を照らす「鳳凰図」の秘密を解き明かす新刊

アートの革新、北斎の「鳳凰図」

無限の探求を続ける日本画の巨匠、葛飾北斎。彼の作品の中でも特に晩年に描かれた「鳳凰図」は、その存在自体が謎に包まれていた。しかし、2023年6月30日、NTT ArtTechnologyと左右社の共同制作により、一冊の本が発売され、この謎に光を投げかけることとなった。その名も「Digital×北斎小布施の「鳳凰図」の謎」。

本書の背景

「鳳凰図」は、長野県小布施町にある岩松院本堂の天井に描かれた壮大な作品だ。北斎が江戸から240km離れたこの土地を訪れ、仕上げたと言われており、その製作過程や意図は謎に満ちている。しかし、NTT ArtTechnologyが開発した「三次元質感画像処理技術(DTIP)」を使ったデジタル化の成果により、今まで見えていなかった細部や北斎独自の工夫が明らかになった。これにより、本書は北斎の傑作に新たな解釈をもたらすことを目指している。

書籍の内容

本書は224ページで、B5判変形のフォーマット。定価は2,640円（税込）で、ISBN番号は978-4-86528-472-0となっている。高精細なデジタルデータを用い、200点以上の図版とともに、関連する年譜や論考も収録されている。この書籍は、北斎と最新技術が出会うことで生まれた、ただの図録ではなく、作品論集としても価値がある。

書籍の企画と監修

このプロジェクトの監修には、北斎館の館長である安村敏信氏が関与しており、北斎の作品に関する豊富な知識を基に本書をまとめ上げている。また、著者には北斎館の学芸員や太田記念美術館の主席学芸員も名を連ね、それぞれの専門性を活かした深い考察がなされている。

北斎に残された謎とは

北斎の作品には、彼が視覚的に追求した「美」の他にも、当時の社会背景や彼自身の人生観が反映されている。「鳳凰図」もその一環であり、多くの観覧者が彼の真意を探り続けている。

この新刊は、単なるアート書籍を超え、アートとテクノロジーが交わる新しい時代の幕開けを感じさせる一冊だ。北斎が描いた意味を紐解くことで、私たちもまた新たな視点で彼の作品を楽しむことができるだろう。ぜひ手に取って、その魅力に触れていただきたい。