風旅出版の新たな挑戦
長野県の株式会社Huuuu(風旅出版)が、2025年12月末に新刊2冊『編集の編集の編集!!!!』と『いきなり知らない土地に新築を建てたい』を発表しました。この出版にあたり、風旅出版は「通年・卸率5掛け(50%)」というユニークな戦略を採用。これは、出版不況や物流コストの増加が叫ばれる中で、書店との関係性を見直し、持続可能な形での本作りを目指すもので、まさに今の時代に相応しい試みです。
新刊の概要
1.
『編集の編集の編集!!!!』(著者:阿部光平、光川貴浩、徳谷柿次郎、堤大樹)
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価格: 1,500円
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発行部数: 1,500部
- この書籍は、ビジネス書や編集ノウハウ本とは異なり、4人の編集者による「編集という営みの再定義」を描いたドキュメンタリーです。効率化が求められる現代において、あえて複雑なプロセスにアクセスし、新たな視点を提供します。
2.
『いきなり知らない土地に新築を建てたい』(著者:徳谷柿次郎)
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価格: 2,000円
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発行部数: 2,000部
- 本書は、2022年の著作から約3年ぶりに徳谷が手掛けた作品で、全国を行き来する中で得たインスピレーションを基に制作されました。手間を惜しまず、独自のスタイルで執筆されたこの本は、彼自身のクリエイティブな探究を表現しています。
なぜ今「5掛け」なのか
現代の出版事業では、書店に並ぶ本が売れることが当たり前でなくなってきています。むしろ困難が増しているのが現実です。風旅出版は、著者自身が全国各地で出版イベントを続けた結果、読者が直接本を購入したくなる感情が高まっていることに注目。この流れを受けて、書店との信頼関係を構築し、販売ルートを開拓するための取り組みとして、原価を抑えた「通年での5掛け」を実現しました。
本作りにあたっては、従来の「フルカラー」を避け、シンプルな1色印刷を採用。また、制作過程で関わるのは編集者とデザイナーのみに絞り、テキストの利用効率を最大限に引き出す工夫がされています。こうした取り組みには利益率が低下するリスクも伴いますが、直販での売上を確保することでそのバランスを保つ考えです。
藤原印刷との協力
また、今回の新刊2冊は長野県松本市の藤原印刷の協力を得て製作されています。藤原印刷は、紙質や判型を時代に合わせて再設計し、物理的な本の魅力を最大化する手法を取り入れています。彼らの提案である「クラフトプレス」は、個人やスモールチームの熱い情熱を注ぎ込んで個性的な本を作る思想を体現しており、風旅出版の理念とも共鳴しています。
読者との新しい関係性
風旅出版は、読者が本を手に取る際の背景に「作り手の顔」が見えることが重要と捉えています。本での満足度や信頼関係は、見知らぬ著者ではなく、密なコミュニケーションを持った作り手に由来するからです。ですから、風旅出版では短期的な販売戦略ではなく、中長期的に書店との信頼関係を醸成し、「持続可能な経済圏」を築くための挑戦を続けていきます。今後の展開にもぜひ注目してください。
会社情報
株式会社Huuuu(風旅出版)と
藤原印刷株式会社は、それぞれ異なる側面から本作りの持続可能な形を模索しています。今後も、地域文化を支える本作りと販売を融合させた取り組みが、出版業界に新たな風をもたらすことでしょう。