琵琶湖のフナズシ研究が明らかにした乳酸菌の秘密
滋賀県の伝統的な発酵食品であるフナズシは、古くから地域に根付き、現代にも受け継がれています。そんなフナズシに関する新たな研究成果が発表されました。今回は、琵琶湖博物館の学芸員、橋本道範氏が研究代表を務める「ナレズシはいかに「洗練化」したのか」というプロジェクトについてご紹介します。これは、サントリー文化財団の助成を受けたものです。
フナズシの魅力とその背景
フナズシは、滋賀県の湖で捕れた二ゴロブナを使った発酵保存食品です。野菜や肉と異なり、フナズシは特に乳酸発酵を利用した独自の加工法が特徴です。フナを塩漬けし、米飯と共に漬け込むことで、しっかりとした発酵が進みます。この過程で生成される乳酸は、フナの骨を柔らかくし、食べやすい形に仕上げてくれます。通常、夏に仕込んだフナズシは約4ヶ月後、つまりお正月に食べ頃を迎えるのです。この時期、フナズシを楽しむ文化が根付いている滋賀県では、フナズシは食卓の重要な一品となっています。
研究の目的と成果
今回の研究では、滋賀県内の27ヶ所から市販されているフナズシを対象に、その微生物の構成と成分分析を行いました。特に注目すべきは、フナズシに含まれる乳酸菌の叢の解明です。研究チームは、龍谷大学の発酵醸造食品機能性研究センターに所属する教授陣と専門助手たちによって編成され、徹底的な調査が実施されました。
解析の結果、フナズシに含まれる乳酸菌は主に2つのグループに分類されることが判明しました。具体的には、Lactobacillus acetotoleransとLentilactobacillus buchneriという2種の乳酸菌が確認されました。これらの乳酸菌の存在が、フナズシの香りや味わいにどのように影響するのかが明らかになったのです。特に、どの乳酸菌が主に存在するかによって、生成される有機酸の種類や量が異なることが分かりました。これがフナズシの風味に直結している可能性が高いとされています。
今後の展望と報告会
本研究の成果は、2024年に発行予定の『食品・臨床栄養』の中で正式に報告される他、3月15日には琵琶湖博物館で開催される研究報告会で、「江戸時代のフナズシに、挑戦する」と題して更なる知見が発表されます。学問の未来を拓くために、今回の研究が地域の伝統文化と食品科学の架け橋となることを期待したいところです。
このように、琵琶湖のフナズシが持つ独自の魅力を科学的に解明する取り組みは、地域の文化に対する理解を深めるだけでなく、発酵食品としての価値向上にもつながるでしょう。今後もこの分野の研究が進展することに期待が寄せられています。