工場のデジタル化とトレーサビリティの強化
1. はじめに
シート製品を製造している東洋シートは、日々の業務において「不良品を発生させないライン」を目指し、生産性向上を図っています。品質管理やカイゼン活動に取り組む中、工場内の設備データや不具合記録が各工程で個別に管理されているため、全体的な不良因子の把握や分析に多大な時間と労力がかかっていました。そこで、東洋シートはIoTプラットフォーム「FogHorn Lightning™」とDX支援サービス「NAVINECT®」を使い、工場全体での品質データ管理が可能なプラットフォームを構築するプロジェクトに着手しました。
2. プロジェクトの内容
このプロジェクトでは、工程ごとに収集した情報を製品単位でのデータに結び付け、容易に追跡できる状態を作ることが主なテーマです。次の3つのステップで進められました。
ステップ1: 品質データのデジタル化
デジタル化の第一歩として、常に稼働中の設備から収集されるデータや作業員、材料、設備に関する情報を漏れなく収集します。この情報を基にしたデータ収集基盤を構築し、エッジサイドでFogHornのデータ処理機能を活用して、リアルタイムに管理しています。
ステップ2: モデルラインによる運用検証
データ基盤が構築された後、実際の生産業務を行い、運用に問題がないかを検証しました。これにより、設計の妥当性を確認し、他のラインへの展開に向けた準備を進めました。
ステップ3: システムの全社展開
約1年半の準備を経て、本社と秋芳工場の主要ライン15本にシステムを展開しました。これにより、製品の品質データを全体的に監視し、分析するトレーサビリティプラットフォームが完成しました。
3. 結果と効果
この取り組みの結果、工場内での不良品の発生状況をリアルタイムで把握できるようになりました。これにより、問題の特定が迅速になり、工場の全体的なパフォーマンスが向上しました。さらに、統合されたデータにより、工程ごとの相互影響を分析することが可能となり、部品の設計見直しや生産ライン全体の最適化を図れるようになりました。
4. 今後の展望
今後、東洋シートはデジタル化された品質データをもとに、不良品の発生傾向を詳細に分析し、製品の開発や生産ラインの改善に取り組んでいきます。当社も引き続き、「不良品を発生させないライン」の実現に向けてサポートをしていく方針です。
このように、IoT技術を活用したデジタル化は将来的な製造業のあり方を大きく変える可能性があります。東洋シートのプロジェクトは、その一端を担うもので、今後の展開が非常に楽しみです。