小野寺史宜の最新作『ぼくは刑事です』が、
2025年5月28日にポプラ社より発売され、読書界に新たな息吹を吹き込んでいます。刑事というと、一般的には複雑な事件や緻密な捜査、あるいはスリリングな心理戦が描かれるミステリーや警察小説を想像しがちです。しかし、本作はそうした枠に収まらない、全く新しい「
刑事小説」の形を提示しています。
主人公は、東京の下町で日々を過ごす若き刑事、
松川律。彼は犯罪と向き合うだけでなく、恋人であるシングルマザーとその愛娘、そしてラーメン店を営む姉一家との温かい交流、同期の刑事とのやり取りなど、ごく普通の日常に起こるささやかな出来事の一つ一つに真摯に向き合います。読者は、時に悩み、時に戸惑いながらも、まっすぐに人生を歩もうとする彼の姿を通して、自身の日常を見つめ直し、明日への一歩を踏み出す勇気をもらえるはずです。
作者の小野寺史宜さんは、2019年の本屋大賞で第2位に選ばれた『
ひと』をはじめ、これまでにも郵便屋さんや編集者、タクシードライバーなど、様々な職業をテーマに、身近な人との心温まる交流を描いてきました。彼の作品が多くの読者に支持されるのは、登場人物たちの繊細な心情の動きや、日々の生活の中での些細な発見を丁寧に掬い取り、誰もが共感できる物語へと昇華させる手腕にあります。その独特の「
小野寺節」は、今回も健在です。
本作で描かれる2年間の月日の中で、松川律は恋人の父親の前科という重い事実に直面し、結婚への道のりで葛藤します。しかし、彼の魅力は何よりもその「
正直さ」にあります。紀伊國屋書店イトーヨーカドー木場店の宮澤さんは、「彼の言葉には嘘がない」「あまりに正直すぎると感じることもあるが、その率直さがあるからこそ信頼できるし、安心して応援できる」と語っています。まさに、彼の内面から滲み出る誠実さが、読者の心を深く捉えるのです。
小野寺さんの文章は、時にドキッとさせる展開がありながらも、全体として非常に落ち着きがあり、読後に清々しい気持ちが残ると評判です。事件や捜査といった外面的な特殊性ではなく、刑事という職業を通じて主人公の内面がどう変化し、成長していくかを描く視点は、小野寺さんならではと言えるでしょう。
『ぼくは刑事です』は、まさに現代を生きる私たちに、日々の生活の尊さや人との繋がりの温かさを改めて教えてくれる一冊です。読了後には、あなたの日常もきっと、より一層愛おしく感じられることでしょう。刑事という仕事の特殊性と、普遍的な人間の感情が織りなす、
心温まる物語をぜひ体験してください。
この感動作は、定価
1,980円(10%税込)で全国の書店にて発売中です。