資生堂『花椿』がアートブックスタイルに進化する理由
資生堂の企業文化誌『花椿』が、創刊から100年を迎える2024年の秋に、新しい形態「アートブック」として生まれ変わります。これまで多くの読者に愛されてきた本誌は、今後年に1度発行される予定です。2024年11月には、待望の第832号が登場する予定で、その表紙には著名な写真家オスマ・ハヴィラティさんの作品が使われます。
新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したクラリス・ドゥモリ氏(フランス出身)は、これまでの『花椿』の理念を受け継ぎながら、より国際的な視点を持ち込む役割を担います。彼女は美の表現を多様化し、フレッシュなインスピレーションを加えることを目指しています。今回のテーマは「ケア(care)」であり、人間関係、社会、自然とのつながりについて深く考察されます。
アートブックとは何か
アートブックは、作家やアーティストが自身の世界観を写真や描写を通じて表現する新しい形式の出版物で、芸術的な価値とともに情報を提供するものとして広がりつつあります。海外の高級ファッションブランドが手掛けるアートブックの多くは、ブランドのアイデンティティや理念を訴求するための重要なメディアともなっています。
『花椿』は1924年から、紙の冊子という形態にこだわり続けてきました。新しいアートブックスタイルは、その優雅さと感覚的な魅力をさらに引き出すチャンスです。
新たな価値の発見
本号では、さまざまなジャンルのアーティストやライターが参加し、多角的な視点で「ケア」をテーマにしたコンテンツが展開されます。たとえば、フランスの精神分析家シンチア・フルーリー氏が寄稿したエッセイでは、「ケアなしには社会は存在しない」と述べ、人々がどのように自分自身や他者、社会、自然へと配慮していくかを考察します。また、写真家ヴィヴィアン・サッセンによる「気配と存在」の特集もあり、視覚を通じてケアの概念を探求します。
グローバルな視点での美の探求
クリエイティブ・ディレクターのドゥモリ氏は、資生堂がこれまで築いてきた歴史や文化を深く掘り下げ、現代における美の価値を問う姿勢を引き継ぎます。彼女は「ケア」の精神に基づいたビジョンを持ち、さらなる美の可能性を広げるとともに、『花椿』を新しい時代へと導く役割を果たします。
WEB版と連動した情報発信
なお、2024年10月18日からはWEB版がリニューアルオープンし、冊子版と連動したオリジナルコンテンツも発信される予定です。日英バイリンガルでの情報提供を行い、より多くの読者にアプローチすることを目指しています。
開幕に向けたイベント予定
この新たな『花椿』の発表を祝し、2024年11月28日から12月1日にかけて東京で開催されるTABI ART BOOK FAIRに出展します。このイベントではドゥモリ氏自身が来日し、特別なトークイベントも行われる予定です。詳細は公式サイトやSNSで随時更新されます。
結語
資生堂『花椿』は、その誕生からの美の哲学を受け継ぎ、さらに新しい視点を取り入れながら進化を続けます。これからも多くの人々に美の感動を届け、心豊かな時間を約束することを目指していきます。新しい章を開く『花椿』に、ぜひご期待ください。