鹿島建設、全自動トンネル打設システムを実用化
鹿島建設(社長:天野裕正)は、低コストの覆工用高流動コンクリートを用いた「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入しました。このシステムは、中日本高速道路株式会社が発注した「東海環状自動車道養老トンネル南工事」に採用され、革新的な進歩を遂げています。
流動化する新しいコンクリート
本プロジェクトで使用された高流動コンクリートは、工場で製造されたスランプ15cmの普通コンクリートに新しい混和剤を加えることで現場で流動化させています。流動性が高く、締固めは不要であるため、全自動システムの利点が最大限に引き出されます。従来の高流動コンクリートは製造コストが高く、現場でのコスト削減が課題とされていましたが、今回の新しいアプローチではコストを大幅に削減しながらも高品質が保証されています。
全自動打設システムの進化
鹿島は2020年に全自動打設システムを開発し、以降、さまざまなコンクリートの種類に対応するために進化を続けてきました。今回、やっと実現したのは、幅広い流動性に対応できるシステムです。この新コンクリートを、2車線断面のトンネル工事に導入することで、様々な施工条件に対応できる柔軟性が生まれ、全自動打設システムの完成形が見えてきました。
開発背景と新技術の導入
山岳トンネルの覆工コンクリートは、狭い空間に打ち込むため、流動性や材料分離抵抗性、早期強度発現性が必須です。鹿島はこれらの要件を満たす工場添加型の新混和剤を開発し、現場での流動化を可能にしました。また、混和剤の自動計測・添加により、作業の人的負担を軽減しつつ、正確な管理が行える仕組みを構築。これにより、施工現場の生産性向上が期待されています。
自動化による効率化
混和剤の添加は、工場のスランプフローと温度から算出された事前作成の早見表を基に行われます。これにより、安定した流動性を保持しつつ、高品質なコンクリートの打設が可能です。さらに、コンクリートの品質管理には2019年に開発された「全量受入管理システム」を活用し、荷卸し時のコンクリートの状態をモニタリングし、規格値に適さない場合には自動で検知できる仕組みが導入されました。
未来の展望
今後、鹿島は全自動打設システムが持つコスト削減の利点を最大限に活かし、さらなる合理化施工の実現を目指します。また、顧客のニーズに合わせた流動性の高いコンクリートが利用できるようにし、トンネル工事における生産性と品質の向上に寄与していく計画です。
工事概要
- - 工事名称: 東海環状自動車道養老トンネル南工事
- - 工事場所: 三重県いなべ市二之瀬
- - 発注者: 中日本高速道路株式会社名古屋支社
- - 施工者: 鹿島建設株式会社
- - 工事諸元: トンネル延長(本坑)2,062m、掘削断面積90.3㎡
- - 工期: 2022年8月~2026年10月
新しい時代のコンクリート施工技術が、業界全体にどのように影響を与えるか、今後の動向が楽しみです。