進化するCIOの役割
最近、マンパワーグループ株式会社が発表した労働白書「2025年 CIOの戦略的展望」では、テクノロジーが急速に発展する中でのCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)の役割や課題について詳細な調査結果が示されています。今回の調査は、世界9カ国から480人のテクノロジー担当役員と913人のIT意思決定者を対象に行われ、合計1,393人の声を集めています。
テクノロジー変革の背景
テクノロジーの進化が加速する中で、企業の競争力はますますテクノロジーの活用に依存しています。特に、CIOには従来のIT管理に留まらず、ビジネス戦略の支援という新たな役割が期待されています。しかし、IT人材不足や社内の抵抗といった課題も多く、これらにどう対処するかが今後の大きなテーマとなります。
調査結果から見えた課題
白書の中で特に注目されたのは、2025年のIT戦略におけるCIOの直面する課題です。具体的には、サイバーセキュリティが77%の企業で最優先事項とされており、予算の増加が計画されています。また、68%の企業がクラウドインフラ、67%の企業がAI技術への投資を進めています。
一方で、76%の企業が必要なITスキルを持つ人材の確保に苦しんでおり、52%のテクノロジーリーダーはAIスキルを既存職務に導入しようとしています。このことは、デジタルトランスフォーメーションが進行する中で、CIOが直面している人材育成の必要性を示しています。
サイバーセキュリティリスクの高まり
アルゴリズムやデジタル技術の進歩は多くの便益をもたらしますが、同時にサイバーセキュリティリスクも増大しています。テクノロジを利用する企業の77%がサイバーセキュリティ予算の増加を予定しており、これは業界全体での危機感を反映しています。しかしサイバー脅威への対応が企業全体で統一されているわけではなく、調査によると37%の企業がリスク戦略が実態と一致していないと回答しています。
AI導入の現状と課題
AIの導入に関しては、全体の37%のCIOしか生成AIを価値を発揮するソリューションとして考えていないことが分かりました。しかし、33%は調査段階、27%は実装段階にいることから、多くの企業がこの領域で取り組みを進めています。特に、AIの倫理的影響を気にするテクノロジーリーダーも多く、企業がAIを導入する際には透明性や公正性に留意する必要があります。
CIOとCOOの連携
調査によれば、CIOの成功にはCOO(最高執行責任者)との連携が最も重要であると答える割合が45%を超えています。しかし、実際には56%のテクノロジーリーダーが上層部にCIOの役割を理解してもらえていないと回答しており、コミュニケーションやリーダーシップの重要性が示されています。特に、共感力が求められる今、CIOは組織内での縦割り構造を打破し、迅速な意思決定を促すサポートが求められています。
テクノロジーリーダーが重視すべき施策
調査結果を踏まえて、CIOが企業において高い成果を生むための7つの優先事項が提起されています。これには、サイバーセキュリティへの総合的なアプローチ、AI活用への現実的な期待の設定、人事部門との連携、そしてIT人材への包括的な研修の提供が含まれています。特に、サイバーセキュリティは技術だけでなく、人材の重要性も含んでおり、組織全体での取り組みが求められています。
まとめ
マンパワーグループの労働白書は、テクノロジーの急激な進化の中でCIOが直面する新たな課題や役割を浮き彫りにしました。今後、企業はこの知見を生かし、テクノロジーを積極的に活用しながら、同時に人材育成や社内文化の改善を進めていくことが求められます。導入されたテクノロジーを最大限に活かすためには、リーダーシップと共感力が不可欠であることは言うまでもありません。