進化の新理論
2025-07-08 10:28:50

進化の新たな視点:千葉大学が明かす小進化と大進化の繋がり

進化の新たな視点:千葉大学が明かす小進化と大進化の繋がり



千葉大学大学院融合理工学府の斉藤京太氏、スウェーデンのルンド大学の坪井助仁博士、千葉大学大学院理学研究院の高橋佑磨准教授から成る研究チームは、生物の進化に関する新たな視点を提唱しました。特に、ショウジョウバエの翅の形態に焦点を当て、「短期的な進化」と「長期的な進化」の関連性に迫る研究が成功したのです。この研究は、進化生物学における重要な謎の解明に繋がります。

研究の背景:進化の二つの側面



通常、生物の進化は小進化と大進化の二つに大別されます。小進化は、集団内での遺伝子頻度や集団間の遺伝的な差異を元にした短期的な変化を反映します。一方で、大進化は新しい種や分類群の誕生など、長期的な過程を指します。これらの進化の間の関連性については、古くからの議論があります。従来主流だった「制約仮説」は、小進化が大進化を形作るという考え方です。この仮説の下では、下位階層の変異が上位階層の進化パターンを制約することが前提となっています。

ひとたび考察が進むと、「整合仮説」と呼ばれる別の視点も現れます。この理論は、各生物が持つ進化の履歴が現在の変異の傾向を形作り、その結果、大きな進化が形成されるという逆の因果関係を示唆しています。しかし、これまでの研究では、これら二つの仮説の妥当性を比較検討することはされていませんでした。今回の研究は、これらの仮説がどのように生物の進化に影響を与えるのかを問うものでした。

研究の成果:進化の多様性を探る



研究チームはショウジョウバエの翅の形態に注目し、個体内の微細な左右差から長期にわたる種間の差異まで、異なる生物学的レベルでの変化を探求しました。具体的には、様々な階層における翅の形状の変化パターンを比較しました。この手法を基に、以下の5つの階層に着目しました。
1. 発生ノイズによる形態の左右差
2. 環境による形態の可塑性
3. 遺伝的な形態変異
4. 小進化による集団内変異
5. 大進化による過去の種間差異

それぞれの階層において翅の形状を定量化し、解析した結果、驚くべきことに、発生ノイズと種間変異の間において最も強い相関が認められました。この結果は「整合仮説」を支持するものであり、さらには大進化の歴史が現生生物の変異の傾向を形成するという逆方向の因果関係についての重要な証拠となりました。

今後の展望と進化生物学への影響



今回の研究は、小進化の積み重ねが大進化に導くという従来の理解を再考する契機となりました。「過去の大進化が生物の変化しやすい方向を形作る」という見解が重要な意味を持つことが示されています。これによって進化の予測可能性に新たな理論的基盤が提供され、進化生物学の分野に新しい指針を与えることが期待されます。今後の研究において、この新しい視点がどのように生物の進化に対する理解を深化させるのか、注目が集まります。


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