台湾におけるドローン産業の成長戦略と安全保障の関連性
近年、台湾の無人機(ドローン)産業は、急激な成長を遂げています。特に、地政学的リスクが高まる中で、防衛、物流、災害対応などの多様な用途に利用されるようになってきました。この状況は、台湾政府の「台湾有事」に備えた軍民融合型の政策に強く影響されています。
台湾のドローン産業の現状
台湾の経済部産業発展署が発表した統計によると、2020年の無人機産業の生産額はわずか7億1000万台湾元でした。しかし、2023年には28億5800万元にまで増加し、約4倍以上の成長を見せたことが報告されています。台湾政府は2030年を見据え、年間生産18万機、産業規模400億台湾元を目指す国家戦略を推進しており、その一環として「無人載具專案會議」が設置されました。これにより、さらなる技術革新と産業育成が期待されています。
クラスター形成の取り組み
台湾では特に嘉義県の「亜洲無人機AI創新応用研究開発センター」が中核となり、研究開発から量産、飛行試験などを一体化する取り組みが進められています。また、政府が3年で47,000機のドローン調達を行う計画が発表されており、国内需要を生み出しつつ技術内製化を促進する狙いがあります。
国防と民生の融合
台湾における無人機は、国防戦略においても重要な位置付けを占めています。レーダー回避性能や長距離偵察能力、さらには蜂群戦術など、コスト効率の高い方法として中国からのプレッシャーに対抗する手段とされています。国防以外にも、農業や防災、海上監視、救急搬送に至る様々な分野へのデュアルユース化が進んでおり、戦時・平時を問わず活用される基盤が形成されています。
日本企業にとっての可能性
日本企業にとっては、台湾の無人機産業は一方でリスクが伴いながらも、多くの機会を提供しています。特に地上制御システム、通信暗号技術、バッテリー管理、AIソフトウェアの分野では、日本企業が技術連携や共同開発を通じて参入する余地が大きいとされています。
また、台湾政府は国際協力にも力を入れており、ポーランドやインド、韓国、ベトナムなどへの輸出拡大を目指しています。このような取り組みは、中国依存からの脱却を目指す「非・紅色供應鏈」の構築とも関連付けられています。
まとめ
台湾の無人機産業は、地政学の影響を受けつつ成長を続けている分野です。政府の積極的な産業政策のもと、クラスター形成や国際協力の拡大が進行中です。今後も特に日本企業にとって、技術的な協力と参画の機会が広がることが期待されます。アジア全体の安全保障や防災連携の構築に寄与することができるでしょう。
執筆者:ワイズリサーチ マネージャー
段婉婷(ダン・エンテイ)
持ち前のリーダーシップと豊富な調査経験を活かし、業界の動向分析に努めています。