企業の気候対策の遅れ
2025-01-28 15:41:30
世界的な気候変動対策における企業の遅れが環境目標を脅かす
グローバル気候変動アクションバロメーターが示す実情
EYが発表した「2024 グローバル気候変動アクションバロメーター」によると、気候変動リスクに対して適切なアクションプランを持つ企業はごくわずか、わずか41%とされています。この事実は、世界の環境目標が危険にさらされていることを示唆しています。特に、世界最大の排出国である中国や米国では、移行計画の採用率が低く、それが行動の欠如につながっています。
調査の背景
この調査は、51カ国、13業種から約1400社を対象に行われ、企業が気候変動に対してどのように取り組んでいるのかを分析しています。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が定める11の提言に基づく情報開示は、企業の気候変動に対する姿勢をあぶり出します。この6年目を迎えるバロメーターでは、企業の開示提言のカバレッジとその質が評価されています。
開示の現状
調査の結果、企業の情報開示率の向上が確認され、カバレッジの平均スコアは94%となりました。しかし、重要なのはその質で、平均スコアは54%に留まっており、報告を避ける企業が依然として多いことが明らかとなりました。特に、開示の質が高い国として挙げられたのは英国や韓国、日本などですが、中東は非常に低い評価を受けています。
差し迫る危機
気候変動リスクに対する対応が不十分であることが、2024年のバロメーターによって示されました。企業は温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいるものの、移行計画を策定した企業は41%に過ぎず、21%は将来的に計画を立てる意向を示しているに過ぎません。危うくも38%の企業は今後の計画を持たないと回答しています。
特に注目すべきは、中国や米国における移行計画の採用率の低さで、中国はわずか8%、米国は32%とされています。一方、英国は66%、欧州では59%が移行計画を採用しており、この差は規制制度の影響と考えられます。
財務のコミットメント不足
企業の財務面でのコミットメントも不足しています。日常の事業運営から生じる支出(OPEX)を公開した企業はわずか4%、設備投資(CAPEX)の報告をした企業も17%です。これは、企業がアクションプランを持ちながらも実行への意識が不足していることを示しています。
EYの気候変動リーダーであるMatthew Bell博士は、「企業は高い目標を掲げるだけでは不十分であり、行動を伴わなければなりません。真剣に取り組む必要がある」と警鐘を鳴らしています。すでに気候緊急事態に直面している今、企業の行動が地球全体の未来を左右するのです。
シナリオ分析の重要性
さまざまな企業がTCFDの推奨するシナリオ分析を用いて気候変動リスクを評価しているものの、依然として実際の財務報告書には反映させていない企業が多く見受けられます。全体の67%がシナリオ分析を実施しているものの、財務報告書に組み込む企業は僅か36%に過ぎません。これでは、企業の長期的な視野でのアプローチが不足していることが明らかです。
6つの行動計画
EYのレポートでは、企業が対策を講じるために実行すべき6つのアクションが提案されています。これには、科学的根拠に基づく目標を立てること、気候変動リスクを財務諸表に反映させること、データを用いた意思決定の促進、サステナビリティチームへの十分な資源の提供、取締役会のスキル向上、セクターを超えたコラボレーションの追求が含まれます。
結論
気候変動に関して企業が直面している課題は国を問わず共通であり、リーダーシップと責任を持って行動することが求められます。EYの日本におけるリーダーである牛島 慶一は、日本企業が世界的に評価を受ける可能性を示唆しつつも、政策的な後押しの不足を指摘しています。未来のために、企業の取り組みが不可欠です。
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