2024年上期の東京オフィス市場と企業移転動向の分析
2024年に入り、東京都心部のオフィス市場には新たな動向が見られます。三幸エステート株式会社と株式会社ニッセイ基礎研究所による共同研究の結果をもとに、オフィス需要や企業の移転状況について詳しく見ていきましょう。
オフィス拡張移転DIの動向
共同研究によると、「オフィス拡張移転DI」は2024年第1四半期および第2四半期ともに69%となりました。この指標は企業のオフィス需要が底堅く推移していることを示しており、過去のコロナ禍と比較するともはや低い水準にはありますが、回復の兆しを見せています。具体的には、オフィス需要はコロナ禍前ほどの力強さを欠いているものの、確かな底堅さを持っているということです。
企業の移転動向
2024年上期、東京都心部5区のオフィス成約面積は45.9万坪と前年同期比で6.3%増加しました。この傾向は特に竣工済みビルにおいて顕著であり、業績回復に伴い、企業のリーシング活動も活発化しています。興味深いことに、新築ビルの供給が減少している中、未竣工ビルの成約面積は前年同期比で25.3%減少したにもかかわらず、竣工済みビルは14.1%の増加を示しています。
ビルクラス間の差縮小
また、ビルクラス別に見ると、2024年上期ではAクラスビルが68%、Bクラスビルが76%、Cクラスビルが74%と、全体的に70%前後の水準で推移しています。このことは、ビルクラス間の需要差が縮小しつつあることを意味しており、さまざまな業種においてオフィス拡張ニーズが増加していることを示唆しています。
業種別の動向
製造業に目を向けると、これまで停滞していたオフィス需要が急回復しています。2024年上期の製造業のオフィス拡張移転DIは75%と高い数字をマークしました。これは、円安などの影響で企業の業績が回復し、それぞれの企業がオフィスを拡張する動きに出ているからです。一方で、情報通信業では全体的にオフィス需要は堅調ですが、ハイブリッドワークの広がりに伴い縮小移転も発生しており、その割合が一定数を占めています。
おわりに
総じて、2024年上期の東京オフィス市場は回復基調に入っていると考えられます。オフィス拡張移転DIは安定した水準を保ちつつ、業種間でも様々な需要の変化が見られます。今後は、物価上昇や新築ビルの供給増加に伴う賃料上昇の動向にも注目が集まるでしょう。市場環境の変化を的確に捉えるためには、信頼できるデータ分析がますます重要となります。