一橋大学の10年
2025-08-04 10:46:59

一橋大学アウティング事件から10年~変化と継承の物語~

一橋大学アウティング事件とその後の変化



2015年、東京の一橋大学法科大学院に通うある男子学生が、自身の性的指向を無断で暴露されたことがきっかけとなり、失われた命がありました。彼は同級生が参加するLINEグループでゲイであることを知らされ、自らのプライバシーが侵害されたことで非常に大きな心の痛みを抱えました。大学のハラスメント相談室や担当教授、保健センターに助けを求めるも状況が改善されない中、彼は2015年の8月24日、校舎から転落し、命を落としました。

この事件から10年後の2025年、株式会社サウザンブックス社は『一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 10年の軌跡』という書籍を出版します。これは、事件を風化させないための重要な一歩となります。

日本の法律と社会への影響



事件を受けて、遺族は大学と同級生を相手に損害賠償請求を行いましたが、悲しいことに裁判では棄却されました。しかし、この判決は日本においてアウティングの違法性について初めて言及されたものであり、アウティングが「人格権やプライバシー権を著しく侵害する行為である」との認識が広がりました。これにより、社会全体でのプライバシーや人権への配慮が増し、改正労働施策総合推進法や全国の自治体においてもアウティング防止に関する施策が盛り込まれるようになりました。

特に、2018年には国立市においてアウティング禁止を盛り込んだ「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が施行され、2020年にはパワハラ防止法でもアウティング防止策の義務化がなされ、制度が確実に進展しました。

変化は個人の意識に



一橋大学アウティング事件は、社会の法律や制度だけでなく、個々人の意識にも変化をもたらしました。事件を受けて、LGBTQ+の方々が自らの人権を守るために声を上げるケースが増えました。また、「もし自分が彼の立場だったら」という視点を持つ人々も多く、意識が芽生え、行動が変わってきました。

書籍の編著者である松中氏は、当時の心境を「彼は私だ」と述べ、事件を機に電通を退職し、LGBTQ+と社会をつなぐ活動に尽力しています。このように、個々の行動が変わり、希望のある未来が描かれるようになってきたのです。

書籍の内容と意義



本書は、8人の著者によって描かれた多様な視点を通じて、この10年の歴史、変化、希望を伝えます。家族や友人が語る彼の想い、事件後に大学でどのような変化があったのか、またアウティングする側の視点、社会が抱える課題の現状などを掘り下げています。

本書が次世代に向けたメッセージとして受け取られることで、より多くの人々にこの問題が共有され、さらなる意識の変化が生まれることを期待します。クラウドファンディングで集まった寄付により、250万円以上の資金で出版が実現しました。

まとめ



一橋大学アウティング事件からの10年の軌跡は、ただ過去を振り返るだけではなく、未来へ向かう希望の物語です。この書籍により、多くの人々が過去の出来事に耳を傾け、共に考え、行動する契機となることを願っています。これからの10年に向け、私たち一人ひとりの意識と行動が重要です。


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会社情報

会社名
株式会社サウザンブックス社
住所
東京都渋谷区代々木2丁目 23-1 565
電話番号
03-6276-6688

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