メコン川の干ばつ問題と国際協力の必要性について考えるオンラインセミナー
2025年9月29日、公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(日本GIF)は、Zoomを活用したオンラインセミナーを開催しました。このセミナーのテーマは「メコン川2019年干ばつの科学と政治―エビデンスの役割と国際協調への道筋」であり、講師として日本貿易振興機構アジア経済研究所の大塚健司氏が招かれました。
開催の背景と趣旨
近年、政策立案においてエビデンスに基づくアプローチ、いわゆるEBPMが重視されていますが、国際関係においてどのように機能するのかは依然として複雑な問題です。特に、国家間で共有されるべきデータが対立を生じさせる可能性があることから、本セミナーでは2019年のメコン川における干ばつを事例として取り上げました。
メコン川は、中国から南シナ海までを流れる国際河川であり、上流に位置する中国のダム運用が周辺国に及ぼす影響が問題視され、特に気候変動による異常気象がその状況を悪化させています。セミナーでは、中国のデータと米国シンクタンクの分析の対立が取り上げられ、この論争が国際的な議論にまで発展した経緯を掘り下げました。
科学と政治の交差点
干ばつ発生時、米国のシンクタンクStimson Centerは、中国のダム運用が2019年の干ばつの一因だとするレポートを発表しました。これを受け、中国側は自国のデータを元に反論。このように、科学的なエビデンスが政治的な対立を引き起こす中で、異なる立場の研究者たちがそれぞれの見解を展開しました。特に、メコン川委員会(MRC)も干ばつの原因をエルニーニョ現象や雨季の遅れとして位置づけ、研究の信頼性を巡る議論が続きました。
大塚氏は、EBPMに則った政策形成を進めるためには、こうした相互作用が不可欠であると強調しました。科学の真実を政策に反映させるだけではなく、多様なステークホルダーとの共同作業が重要であるとの見解が示されました。
議論の流れと質疑応答
セミナーでは、メコン川のダム計画や国際河川の管理状況についても多岐にわたる議論が行われました。参加者からは、特にメコン流域の国際制度や2019年干ばつの政治的側面への関心が高かったことがわかります。また、終了後のアンケートでも多くの質問が寄せられ、このテーマに対する高い関心が確認されました。
まとめ
現代の国際環境において、複雑な水資源の管理と国際協力はますます重要な課題となっています。メコン川の事例は、科学的エビデンスと政治的意思が交錯する中で、どのようにして実効性のある協力関係が築かれるのかを考える上での重要な示唆を与えてくれます。国際協調の道筋について、今後も幅広い議論が求められています。