日本の著名な観光地、箱根町が観光客の増加に伴う交通渋滞という課題に直面しています。この問題を解決するため、東京大学発のAIスタートアップである株式会社イージーエックス(以下EasyX)と箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)が共同でプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、「パーソナライズされた混雑しない旅行プランを提案するAIシステムの開発」を目指しており、ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)に採択されています。
箱根町は、毎年約2000万人の観光客を受け入れ、2900億円以上の観光消費を誇る一大観光地ですが、交通渋滞が観光体験に影響を与えています。このため、箱根DMOはデータ分析を強化し、混雑情報が表示されたデジタルマップを昨年リリースしました。これにより、観光客が訪れる際の交通量を事前に把握できるようになりました。
EasyXは観光業界でのDXやAI活用を推進しており、人流データや売上データを駆使してさまざまな予測アルゴリズムの開発に取り組んでいます。今回のプロジェクトでは、箱根DMOが保有する混雑予測データや旅行者属性のアンケート結果を元に、オーバーツーリズムの解消と満足度の向上を目指します。
具体的なプロジェクト内容としては、神奈川県及び東京都近郊から訪れるリピーター向けに、Webアプリケーションを提供予定です。このアプリでは、旅行者が自分の属性や趣向を入力し、その情報に基づいて最適な観光スポットと渋滞を避けるルートを自動で生成します。これにより、混雑しない旅行プランが作成され、快適な観光体験が実現することが期待されます。
サービスリリースは2024年12月を予定しており、その後はアルゴリズムやユーザーインターフェースの改善を行い、2025年3月までに利用回数1万回を目指します。この実証実験が成功すれば、他の観光地への導入も検討され、全国的なオーバーツーリズム解消や観光消費の向上に貢献することが期待されています。
ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)は、神奈川県内の大企業と質の高いベンチャー企業の連携を促進するプログラムです。この取り組みにより、イージーエックスと箱根DMOのマッチングが実現しました。観光データの活用を通じて新たなビジネスチャンスを生み出すことは、地域経済の活性化にもつながります。
今回のプロジェクトに携わる両社のリーダーからのコメントも紹介します。EasyX株式会社の代表取締役、西村拓人氏は「混雑しないルートをAIで提案し、ユーザー満足度を高めつつ、箱根町の観光消費額を増加させる価値を提供したい」と語っています。また、箱根DMOの専務理事、佐藤守氏は、「蓄積した観光データを活用することで、旅行者が快適に箱根を楽しむ環境を整えたい」と期待を寄せています。これにより、箱根町における観光業のさらなる発展が見込まれています。