虫を描く女、その波乱に満ちた生涯
中野京子による新しい著書『虫を描く女 「昆虫学の先駆」マリア・メーリアンの生涯』が、NHK出版から2025年4月10日に発売されます。この作品は、17世紀の生物学と芸術の両方にその足跡を残したマリア・メーリアンという女性に焦点を当てています。メーリアンはフンボルトやダーウィンといった著名な科学者たちよりも前に、独学で昆虫を研究し、その細密で大胆な絵画を通じて昆虫の変態を描き出しました。
メーリアンとその時代
生物学が発展していない時代、アリストテレスが唱えた“虫は腐敗物から自然発生する”という説が広く信じられていました。それに対抗したメーリアンは、イモ虫とチョウが同一の生物であることを示すため、科学と芸術の融合を試みました。その結果が彼女の絵画であり、これらは後の昆虫学の礎となりました。この本では、メーリアンの生涯と業績を詳細に解説し、彼女が生み出した作品の数々も多数収載しています。
新書としての復刊
『虫を描く女』は、中野京子の以前の著作『情熱の女流「昆虫画家」 メーリアン波乱万丈の生涯』を基に、一部加筆した形で新書判にまとめられています。彼女の28歳時の処女画集から、研究の集大成となる『スリナム産昆虫変態図譜』まで、多彩な作品がフルカラーで紹介されます。この復刊は、読者が手に取りやすい形で、再びメーリアンの素晴らしい世界を体験できる機会を提供します。
養老孟司氏の推薦
この著書の内容については、解剖学者の養老孟司氏が「日本では未だ広く知られざる先駆者の姿を鮮やかにすくい上げた貴重な書」と推薦しています。メーリアンの功績を再評価する機会として、この作品は重要な価値を持っています。
メーリアンの生涯
彼女はカトリックの影響を強く受ける時代に、自立の道を選びました。夫と離婚した後は、52歳で娘と共に大西洋を渡って南米で2年間の調査旅行を行い、科学者としての生活を追求しました。この壮烈な生涯を生き生きと描写した本書は、メーリアンの探求心と情熱が詰まった物語です。
目次
1.
フランクフルト時代(〜18歳): 小さき虫に神が宿る
2.
ニュルンベルク時代(〜38歳): 科学と芸術の幸福な融合
3.
オランダ時代(〜51歳): 繭の中で変化は起こる
4.
スリナム時代(〜54歳): 悦びの出帆
5.
アムステルダムでの晩年(〜69歳): 不屈の魂は何度も甦える
この新書発刊について、試し読みができる機会がNHK出版のデジタルマガジンで公開されています。興味を持たれた方は是非、手に取ってみてはいかがでしょうか?
詳しくはこちら。