研究結果の発表
AI技術の進化により、マーケティングリサーチの分野でも新たな可能性が広がっています。ラフ・コモンズ株式会社(東京都新宿区)と株式会社ボーダーズは、AI-DeepResearchと消費者調査の連携に関する実験研究を行いました。この研究は、マーケティングリサーチにおけるAIの活用法とその課題を明らかにすることを目的としています。
DeepResearchとは?
DeepResearchはAIが人間の思考過程を模倣して、自律的に調査と分析を行い、構造化されたレポートを生成するツールです。これにより、市場調査をAIが代行することができ、消費者調査に必要な設計や項目を提案することも可能です。この研究では、AIがどのように市場調査を支援できるか、またリサーチャーとAIの協力の効果を探りました。
実験方法
研究では次の4つの方法を用いて実施しました:
- - (R0) 消費者調査を要求しない
- - (R1) 消費者調査を要求し、DeepResearchの提案通り実施
- - (R2) 消費者調査を要求し、リサーチャーによる指示・修正を加えて実施
- - (R3) R2に加え、集計や分析に対するリサーチャーの指示・修正を行う
最終のアウトプットを比較し、AIと人間が連携した際の効果や問題点を分析しました。
実験結果の要約
実験の結果、DeepResearchが提案する設計と人間のリサーチャーによる修正を加えた設計では、結論に違いが生じました。これはAIの設計において、回答バイアスの考慮が足りなかったためです。AIによる生成結果は一見すると説得力がありますが、実は見落とされがちな課題が含まれています。
特に、DeepResearchの生成情報は迅速で膨大な量を提供し、多くの参考点があります。しかし、適切な役割分担、すなわちAIによる基本的な骨子の生成と人間による監修・修正がなされることで、より強力なツールとして機能することが期待できます。
DeepResearchの提案における主な課題
研究では、以下のような課題が指摘されました:
1.
設計・調査票に関する問題
分析方針との整合性の不十分、目的観点を考慮しない標本設計、回答バイアスの未考慮など。
2.
集計・分析に関する問題
結果の創作、ファクトと解釈の混同、データへの過適合が見られました。
これらの課題は、AIを効果的に利用するために克服する必要があります。
今後の展望
今回の研究結果は、AIとマーケティングリサーチの融合がいかに新たな市場調査手法を生み出すかという未来の可能性を指し示しています。関係者の議論を促進し、AIの活用方法を模索するための一助となることを期待しています。AI技術と人間の知識をうまく融合させることで、今後ますます進展するリサーチ業界における新たなフロンティアを切り開いていくでしょう。