『三行怪々』の魅力
2024-07-29 06:25:33

三行から浮かび上がる神秘の世界——大濱普美子『三行怪々』の魅力

大濱普美子『三行怪々』に迫る人々の心をつかむ不安な魅力



7月29日、大濱普美子の初のショートショート集『三行怪々』が河出書房新社より発売されました。本書には、著者が書き続けた短編が200篇収められており、各篇は50〜60文字と極めて短いながらも、奥深い世界観を感じさせてくれます。実験精神あふれるこの作品集には、「百文字病」というユニークなテーマが全篇を貫いており、まるで不穏な気配が漂う独自の文学空間を展開しています。

大濱普美子は、2022年の泉鏡花文学賞を受賞した短篇集『陽だまりの果て』で注目を浴びましたが、本書『三行怪々』は彼女の新たな挑戦です。昨年文庫化されたデビュー作『猫の木のある庭』も多くの読者から支持を受けており、本書によって新たなファン層の獲得が期待されています。

本書は、ページをめくるたびに独特の「危険」を感じさせる内容が魅力で、読者は三行の向こう側に潜む不穏な予感を感じざるを得ません。これはただの読み物ではなく、心に小さな波紋を投げかける作品として評価されるでしょう。各短編には妙なトリックや幻想的な要素が散りばめられており、作品を読み進めるごとに謎めいた感覚が強まってくるのです。

本書からの気になる一部紹介


まず一篇を取り上げましょう。ある場面で、主人公はタマという名前の猫を撫でながら、人間の与える「いい子」という評価に戸惑います。「今抱いている毛の塊は、一体何だろう」というセリフからは、視覚と現実の狭間にある不安が漂ってきます。このように、大濱の言葉は短くとも、深い意味を持つ表現へと昇華していることが多く、祖先を思い起こさせるような風景にも触れることができます。

次に、迷子になった主人公が異次元とも思える状況に遭遇する作品では、「出られます」との説明に従った結果、昨日に戻ってしまうという夢か現実か分からない結末が待っています。この不条理な出来事がどのように展開するのか、読み手は引き込まれてしまいます。

また、特定の日を思い起こさせるような一篇では、消えない燭台と命日が結びつけられ、非常に物悲しい雰囲気を醸し出しています。これらの短編が集まることによって、まるで一つの大きな物語を形成しているかのような錯覚すら覚えます。

著者紹介と作品情報



大濱普美子は、1958年生まれの作家で、慶應義塾大学を卒業後、フランス文学を学びました。彼女のキャリアは、他国での生活や交流を通じて豊かに彩られており、さまざまな文化的背景が作品に色濃く反映されています。彼女の著作には、『たけこのぞう』の改題版がある『猫の木のある庭』や、『十四番線上のハレルヤ』等、独自の世界観を持つものばかりです。

本書『三行怪々』はB6変形判の112頁で構成されており、税込価格は1,980円となっています。この新刊は、大濱普美子の作品の新たな幕開けであると同時に、彼女の短編作品が引き起こす幻想的な魅力を余すところなく体現した一冊です。読者は、ページを捲るたびに秘められた恐怖と興奮を存分に味わえることでしょう。ぜひ手に取って、その不穏な気配を体験してください。


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会社情報

会社名
河出書房新社
住所
東京都新宿区東五軒町2-13
電話番号
03-3404-1201

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