新刊『戦友会狂騒曲〔ラプソディー〕』の魅力
2024年7月29日に、神田外語大学の講師である遠藤美幸氏の新著『戦友会狂騒曲〔ラプソディー〕』が発売される。これは、2019年に岩波書店の『世界』で連載された内容を基にした作品であり、戦争を経験した元兵士たちの晩年を様々な視点から探る一冊だ。
戦友会の先入観を覆す内容
一般的には「戦友会」と聞くと、高齢者が戦争の思い出を語る集まりを想像しがちだ。しかし、遠藤氏の著作はその先入観を払拭する内容となっている。元兵士たちの人間関係や保守的な価値観を持つ彼らに対して、若者たちがどのように影響を及ぼしているのか、この本を通じて描かれる。著者は20年以上にわたり、老人たちの複雑な心情を見つめ続けてきた研究者であり、その経験が色濃く反映されている。
書籍の背景と意義
遠藤美幸氏は、ただの歴史研究者ではなく、老人たちの集まりで「お世話係」を務めるという特異な立場にいる。彼は、ガダルカナルやビルマの戦いを経験した老兵たちが語る苛烈な体験を直接聴き、彼らの心の葛藤を掘り下げる重要な役割を果たしている。その中で、保守系の若者たちとの関わりも描き出され、社会的な対立や世代間のギャップが浮き彫りとなる。
目次から見える内容の深さ
この書籍の目次は、豊かな内容を予感させるものだ。以下は、その章立てである。
- - 第1章 変調をきたす「戦友会」
- - 第2章 若者たちの「来襲」
- - 第3章 老兵、戦争のホンネを語る
- - 第4章 「武勇伝」の裏側
- - 第5章 戦友なきあとに
- - 終章 不戦こそ慰霊
それぞれの章が、戦友会の変容や、老兵たちが抱える戦争に対する本音、戦後社会における彼らの役割など、さまざまな側面を掘り下げているのです。特に興味深いのは、若者が戦友会に流入し、そこに何らかの衝突が生じている様子である。
著者のプロフィール
遠藤美幸氏は1963年生まれで、イギリス近代史やビルマ戦史の研究者として知られている。神田外語大学と埼玉大学の講師を務めるほか、不戦兵士の語り継ぎを行う団体の共同代表としても活動をしている。2002年から元兵士の体験を聴く活動を続けており、彼の著書には『「戦場体験」を受け継ぐということ─ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて』や、共著の『悼むひと』などがある。
本書の入手方法
『戦友会狂騒曲〔ラプソディー〕』は地平社から発行され、全国の書店で2024年7月29日から販売される予定だ。定価は本体1,980円となっている。ISBNは978-4-911256-07-7。
この新刊が、戦争という重いテーマを扱いながら、私たちにとっての戦後の意味や記憶のあり方を考える良い機会を提供してくれることを期待している。ぜひ手に取ってみてほしい。