職場の信頼関係の新常識:上司と部下の絆を深めるためのヒント
株式会社パーソル総合研究所と九州大学の池田浩研究室が共同で行った「上司と部下の信頼関係に関する研究」は、信頼の重要性が高まる職場での新しい知見を提供しています。特に、信頼は単なる相互交換にとどまらず、「被信頼感」と呼ばれる感覚も大きな要素であり、これが信頼形成の重要なメカニズムであることが明らかになっています。
1. 信頼のらせん関係とは
本調査では、リーダーがメンバーを信頼し、メンバーがその信頼を感じ取ることで、信頼関係が深化する「信頼のらせん関係」が提唱されました。この循環は、上司と部下の信頼が互いに高まり合う様子を描写しています。調査に参加した304名のリーダーと1848名のメンバーにおいて、3か月間の追跡調査の結果、時間が経つにつれて信頼の深化が見られました。特に、正のサイクルが形成されている場合、業務成果やメンバーのウェルビーイング(はたらく喜び)にも良好な影響が及びました。
2. メンバーへの信頼を高めるリーダーの心構え
上司がメンバーへの信頼を築くためには、広い視点を持った「拡張型の人材観」が求められます。これにより、部下の能力や意欲に期待をかけ、成長を支援する姿勢が強化されます。逆に、固定型の人材観は信頼の低下を招くため注意が必要です。
また、メンバーが早いレスポンスを見せることで、リーダーの信頼は強化されることも示されています。信頼を築く際には、自己主張や効果的なコミュニケーションが鍵となります。
3. 被信頼感を得るために
リーダーとメンバーが相互に「信頼されている」と感じることは、信頼関係の構築において重要な要素です。特に「サーバントリーダーシップ」という支援的な方式が有効とされています。リーダーはメンバーの自主性を尊重し、優れた環境を整えることで、メンバーは自信を持ち、信頼感を得ることができます。
4. 一方向的不全関係のリスク
研究によると、職場における信頼関係の52.4%が「一方向不全関係」であることが確認されました。つまり、部下は上司を信頼していても、上司が部下を信頼していないケースが多く見られます。この状況を改善するには、上司が部下に期待をかけ、成長を支援する姿勢が不可欠です。
5. チームパフォーマンスと信頼の関係
信頼が定着している職場では、個々の業績だけでなく、チーム全体の業績も向上する傾向があり、メンバーの幸福感も高まります。良好な信頼関係は、エンゲージメントやチームワークを育み、組織全体の成果に寄与することが示されています。
6. 1on1ミーティングの効果
1on1ミーティングは、信頼関係を深める上で非常に重要な手段です。この調査によると、リーダーとメンバーの信頼構築において、互いに信頼を得るためには「発言量」や「深い内容の共有」が鍵であることがわかりました。1on1は単に指示を伝える場ではなく、信頼を築くための重要な機会であると認識することが重要です。
結論
本研究は、現代の職場環境において、信頼のメカニズムを理解し、それを活用することで、より良い組織作りに繋がることを示しています。上司と部下の信頼関係を深めるためには、リーダーとメンバーが互いの存在を大切にし、積極的にコミュニケーションを図ることが不可欠です。信頼を築くプロセスには時間がかかりますが、努力の価値は十分にあります。