金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」第27回議事録:資産運用会社におけるプロダクトガバナンスの強化に向けた議論
金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」で議論された資産運用会社のガバナンス強化
金融庁が開催した金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」の第27回議事録の内容をまとめた。議題は、資産運用会社におけるプロダクトガバナンスの強化。欧州の規制事例や国内運用会社の取り組み、今後の課題などが議論された。
欧州の規制事例:MiFID IIが示すプロダクトガバナンスのあり方
議事録では、PwC Japan有限責任監査法人の辻田氏と久保氏から、欧州の金融商品取引法(MiFID II)におけるプロダクトガバナンスの規制について説明があった。MiFID IIでは、顧客に適した金融商品の提供を確保するため、資産運用会社と販売会社の連携による商品適合性の検証が義務付けられている。
主な内容は、
商品組成会社と販売会社の行為を規制する:商品組成会社は、販売対象とする顧客層を特定し、販売後も販売会社をモニタリングして商品が顧客層に適合しているか定期的に検証する必要がある。
情報交換の仕組みを構築する:商品組成会社は販売に必要な情報を販売会社へ、販売会社は顧客情報やフィードバックを商品組成会社へ提供する必要がある。
プロポーショナリティー(釣合いの取れた方法):商品の複雑性に応じて、ターゲット投資家層の特定のレベルを調整する。複雑な商品は、より詳細な特定が必要となる。
欧州におけるプロダクトガバナンスの規制は、商品の組成者と販売者の双方に責任を求め、顧客の最善の利益を確保するための枠組みを提供していることが示された。
国内資産運用会社の取り組み:野村アセットマネジメント株式会社の事例
野村アセットマネジメント株式会社の小池委員は、同社のプロダクトガバナンスの取り組みについて説明した。
顧客目線に立った評価プロセス:従来のパフォーマンス重視型から、商品全体を顧客目線で評価する体制へ進化。
ファンドレビューの導入:700本以上の公募投信をパフォーマンス、商品性、情報提供の3点で評価し、その結果をウェブサイトで公開。
運用担当者の情報開示:ファンドマネジャーの氏名、顔写真、投資哲学などを公開し、透明性を高める取り組み。
運用力の強化:採用、育成、評価の各フェーズにおいて、運用担当者の能力向上に力を入れている。
想定顧客属性の明確化:商品性に応じた3つの顧客想定を分類し、それぞれに対応する。特定顧客向けのファンドには特別な対応を行う。
野村アセットマネジメントは、顧客本位を重視したプロダクトガバナンスの強化に取り組むことで、顧客への説明責任を果たし、高品質な商品を提供することを目指している。
プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方と論点
金融庁の齊藤企画市場局市場課長は、プロダクトガバナンスに関する基本的な考え方と論点を説明した。
顧客に対する忠実義務と最善利益勘案義務を踏まえ、顧客の最善の利益にかなった商品を提供するためのガバナンスを構築する。
商品組成、提供、管理の各プロセスにおける品質管理を実効性あるものにするために、独立した検証体制を構築する。
投資家にとって、各社のプロダクトガバナンスの確保に関する取組が見える化されることが重要。
プロダクトガバナンスの原則は、顧客本位の業務運営に関する原則を補充するものとして位置づけられるべきだと主張した。
議論の焦点:顧客の最善の利益とガバナンス体制の整備
ワーキング・グループでは、プロダクトガバナンスの強化に向けたさまざまな意見が出された。主な論点は以下の通り。
顧客の最善の利益をどのように定義するか:顧客属性、ライフプラン、リスク許容度など、多様な顧客のニーズをどのように捉え、商品設計に反映させるか。
プロダクトガバナンス体制の整備:運用会社は、顧客の最善の利益を確保するための体制をどのように構築するのか。特に、外部の目線を取り入れるための仕組みが重要となる。
販売会社との情報連携:商品組成前、組成時、組成後における販売会社との連携を強化することで、顧客属性の理解を深め、より顧客に適した商品の提供を目指す。
情報提供の透明性:運用体制、運用責任者、投資哲学などを積極的に公開することで、顧客の理解と信頼を獲得する。
不芳ファンドの定義と対応:パフォーマンスが低迷しているファンドに対して、どのように対応していくのか。
* プライベートクレジットなどの新しい投資商品への対応:プライベートクレジットなど、従来よりも複雑な商品が増加する中で、プロダクトガバナンスをどのように適用していくか。
まとめ
金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」の第27回議事録は、資産運用会社におけるプロダクトガバナンスの強化に向けた重要な議論の場であった。顧客本位を重視した商品提供、ガバナンス体制の整備、販売会社との連携、情報提供の透明性など、様々な課題が浮き彫りになった。今後の議論では、これらの課題を具体的に解決するための施策が検討されることが期待される。